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「豊かな国」はどこへ消えた?(下) こんな日本に誰がした その2

Japan In-depth / 2023年11月21日 13時34分

「景気が悪くて物が売れない→売れないから値段を下げなくてはならない→値下げしてしまうと、今度は売れてもあまり儲からない→儲からないから賃上げなどできない→賃金が上がらないから皆が消費や娯楽にお金を出せない→ますます景気が悪くなる」


 これがデフレ・スパイラルで、バブル崩壊後に顕著となり、20年にわたってこのような状態が続いていた。


 そこで日銀は市中銀行から大量の国債を買い上げ、いわば市場に大量の資金を注入することで景気回復を図ろうとしたのである。今度は、「金利が下がってお金を借りやすくなる→企業は設備投資や新規雇用をしやすくなる→それが内需拡大に直結し景気が回復する」


 というスパイラルを目指したので、具体的な目標は物価上昇率2%とされた。景気拡大に伴う「良きインフレ」と言えばよいか。


 その成果として株価は大幅に上昇し、雇用も増えたことは事実で、安倍首相自身、


「400万人以上の雇用を新たに創出した」


 と誇ったが、問題はその内実である。


 大和総研などの資料を見る限りでは、たしかに2012年から19年までの間に、役員を除く被雇用者は499万人も増加した。ただし、正規雇用が149万人の増加にとどまるのに対し非正規雇用は349万人である。


 これは安倍首相退陣後の特集記事でも触れたが、とどのつまり、形だけは「自営」で、勤務時間の上限もない「ゼロ時間契約」で働く配送ドライバー(Uber Eatsの配達員なども同様)や、社会保障も退職金制度もないワンオペ「店長」などが増えただけなのである。


 安い給与で長時間働かせることができる人が増えたので、企業の業績は上向き、それを反映して株価は上昇した。


 だが、こうした雇用形態ゆえに実質賃金は低下する一方だったのである。アベノミクスを「アホノミクス」と揶揄したエコノミストもいたが、働く者の購買力を増すことなしに、どうして景気の回復が見込めるのだろうか。


 もうひとつ、市場金利が低下したことにより、為替相場が円安に触れた。


 これにより、輸出産業は大いに助かったのだ。


 これまた本誌の読者には初歩的に過ぎるかも知れないが、仮に1個1000ドルの商品を10万個輸出したとしよう。売り上げは1億ドルである。


 輸出入の決済はドルで行われるわけだが、企業の収益は円単位なので、為替の問題は大きい。日本円の過去最高値は1ドル=75円332銭(2011年10月31日)であったが、話を分かりやすくするために80円で考えてみよう。前述のビッグマック指数から得た発想でもあるが、これだと輸出した企業が受け取れるのは80億円となる。


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