アメリカの感謝祭とタイタニック その2
Japan In-depth / 2023年11月26日 12時0分
柏原雅弘(ニューヨーク在住フリービデオグラファー)
【まとめ】
・NYのメイシーズ百貨店は20世紀、世界最大のデパートだった。
・メイシーズを世界最大にしたイジドー・ストラウスはタイタニック号沈没の犠牲になった。
・メイシーズ従業員が「自発的に」企画して1924年に行われたのがサンクスギビング・デーのパレード。
20世紀に世界最大のデパートだった、ニューヨークのメイシーズ百貨店は、現在でも全米最大の売り場面積(ニューヨーク旗艦店において)を誇るデパートである。
▲写真 メイシーズ創業は1858年(安政4年)で、日本に黒船が来航した翌年である(筆者提供)
このデパートを世界最大にまで育て上げたのは、イジドー・ストラウス(Isidor Straus/1845〜1912)というユダヤ系の人物だ。バイエルン王国(ドイツの前身の国家)の生まれで9歳の頃、アメリカに亡命した父親に呼ばれ、米国に渡った。イジドー・ストラウスと聞いても、ピンと来る方はあまりいないと思う。
1997年の映画「タイタニック」の中で、沈没するタイタニックからの脱出を諦め、妻とベッドの上で最後を迎えるシーンを覚えてる方は多いのではないか。この映画のモデルになった人物がイジドーである。ちなみに、映画で、夫と共に最後を迎える妻も実在の人物で名をアイダという。
▲写真 イジドー・ストラウス 出典:J.E. Purdy/Library of Congress/Corbis/VCG via Getty Images
イジドーの話は19世紀も終わりの頃にさかのぼる。
イジドーは弟のネイサンとメイシーズの地下の売り場に陶器販売の店を出店した。店の評判は大変良く、その売上は、メイシーズ全体の1割にも及んだという。その後、創業者「R.H.メイシー」が亡くなり、経営を引き継ぐべきメイシーのパートナーと親族が相次いで亡くなったため、傾きかけた事業を引き継ぐ形で店の所有権を譲り受けた。イジドーはまさに中興の祖であった。
経営者の顔とは別に、イジドーは政界ともつながりがあった。
メイシーズの経営権を手に入れたのは、当時懇意にしていたクリーブランド大統領の後押しがあったとも言われ、自身も一旦はニューヨーク選出の下院議員にまでなるが、最後は請われても政界へ進出せず、メイシーズの経営に集中した。
イジドーが力を入れたのは、経営は言わずもがなではあるが、当時の大企業のトップとしてだれも積極的に手を出したがらなかった従業員への福利厚生であった。イジドーは、大企業として社内の保険制度、会社の補助付きの社員食堂などを完備させた大企業の最初のアメリカ人経営者とされる。(参考:Mystery Shrouds Macy’s Titanic Plaque – The Forward)
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