外苑の樹木より問題なのは「公共性」~東京都長期ビジョンを読み解く!その103~
Japan In-depth / 2023年11月26日 23時0分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・外苑問題、情報公開手続き踏んだが、都民・区民に伝わってなく、景観・森林の価値を軽視。
・再開発自体の必要性も問われていくべき。
・選挙の「争点」としても都民的議論をすべき。住民投票、最低でもアンケート調査なども必要。
東京都の外苑問題。樹木の伐採について、再開発反対の署名29万筆、都が事業認可したのは違法という住民の提訴などなど反対運動が起こっている。ユネスコの諮問機関の国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が、神宮外苑再開発計画は文化遺産に危機的状況をもたらすと「ヘリテイジ・アラート」を発し、撤回を要請すると、1000本を超える樹木の伐採・移植への批判が広がり、世論も沸騰。
・神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所の入替と建設
・高層ビル2棟を新設
・新神宮球場併設のホテルを新設
・伊藤忠の東京本社ビルの建替
・神宮球場と軟式野球場の跡地に2か所の芝生広場を整備
という計画である。スポーツ拠点整備のための再開発でもあり、前回説明したように「税金からスポーツ施設などの建設費をねん出しないで済んだこと」というメリットもある。
図)開発後のイメージ
出典)東京都都市整備局「神宮外苑地区 よくある質問と回答」
問題は、第一に、情報公開手続きは踏んだものの、明らかに多くの都民・区民に伝わっていなかったこと。第二に、景観・森林という価値を軽視したことである。
■過去の経緯、まとめ
過去の経緯を整理すると以下のようになる。
1926年:
明治神宮外苑地区一帯は景観保護のため日本初の「風致地区」に指定
建物は最高高さ15メートルという制限
1970年:
条例で高さ制限が15メートルに
2003年11月:
共同機構、東京都都市再生協議会、東京防災まちづくり協議会が「東京都防災まちづくり計画事業提案書」を作成
2012年8月:
新国立競技場の公募開始、国際デザインコンペ
*基準には、すでに高さが「70メートル以下」との記載
2012年12月:
新国立競技場建設決定と同時に事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が新たな都市計画を作成
2013年6月:
東京都の都市計画審議会にて神宮外苑風致地区の「高さ20m、容積率200%」制限を「高さ75m、容積率250%」に緩和。東京都が「再開発等促進区」を設定
2013年12月:
公園まちづくり制度
既存の都営霞ヶ丘アパートが撤去、新国立競技場だけでなく、日本青年館ビルや三井ガーデンホテルなどの建築物も新設
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