消費税という壮大なインチキ(下)こんな日本に誰がした その5
Japan In-depth / 2023年11月30日 17時0分
この点フランスはじめヨーロッパ諸国のVATは、インボイス制度で完結している。仕入れに際して受領したインボイス(領収書)と、販売の際に発行したインボイス(請求書)の差額が利益として課税されるだけなのだ。
シンプルで分かりやすいが、シンプルであるがゆえの問題点もあると言われている。
つまり、インボイスが税金を安くするためのツールと言うか、一種の金券としての機能を持つので、裏社会に流れるといった問題が前々から指摘されているのだ。
しかし、そんなことを言うなら、わが国の企業社会でも、領収書が節税(有り体に言えば脱税)ツールとして機能していた。
最近はどうなのか知らないが、今世紀の初め頃には、金券ショップの中にたちのよくない店があって、領収書が売買されていた、という目撃証言を私は得ている。
国税局査察部で働く女性を主人公にした『マルサの女』(1987年)という映画では、裏社会とも繋がっている金満実業家が敵役となるが、その彼のもとに、裏金を表に出してやる(公然と使えるようにする)と称して、5000万円分の宝くじ当選券を5500万円で売りつけようとする男が現れる。そのシーンでは、
「領収書買う場合は1割ですよね」
という台詞があった。蛇足ながら宝くじの当選金は非課税だから、ストーリーとしてちゃんと成立している。
昭和のサラリーマン生活を生き生きと描いた、山口瞳の作品の中にも、経費の精算の仕方もろくに知らないフリーランスの青年に対して、著者の投影とおぼしき主人公が、
「僕が領収書を集めてきて、代作して上げるけどね」
などと諭す描写があった。早い話が、表社会(?)のサラリーマンでも、罪悪感など抱いていなかったということか。
日本でインボイス制度を導入した大義名分は益税(消費者が支払った消費税分を小売業者が納税せず、利益としてしまうこと)を一掃して税負担を適正化する、というものだが、実際には上記の通り、領収書がインボイスに取って代わるだけのことで、その気になれば「消費税を着服する」方法などいくらもある。真面目な納税者だけがインボイス作成の手間と増税に苦しめられることになるのだ。
さらに言うなら、輸出企業はどうなるのか。
日本の消費税は、ほぼ全ての商品やサービスに対して課せられているが、輸出に際しては免税の特典がある。
これも前回紹介させていただいた拙著の中で述べていることだが、一般的には売り上げに消費税率を乗じた金額が課税対象となる。ところが大手輸出企業は、海外の消費者からは消費税が取れないという理由で、売り上げにゼロをかけてしまうのである。売り上げ自体が何百億、年千億あろうとも、ゼロをかけた金額=課税対象額はゼロなのだ。
この記事に関連するニュース
-
国民ブチギレ!? なぜ「13年」で“自動車税&重量税”高くなるのか…「クルマは税金の塊」「いい加減見直して〜」の声も? 理不尽な重課措置の仕組みとは
くるまのニュース / 2024年6月21日 15時10分
-
連邦政府、増税を柱とした税制改正案を下院に提出(ロシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月19日 0時20分
-
昔は「消費税」がゼロ円だったって本当? 消費税の有無で「モノの価格」がどれだけ違うのか解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月14日 5時10分
-
定額減税を、給与明細に「明記させたい」政府の「屈折した思い」...本当に税金に注目させて大丈夫?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月5日 19時40分
-
インボイス発行事業者未登録は7割 理由は「課税売上高が1000万円以下だから」が最多
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月4日 17時15分
ランキング
-
1瑠奈被告「私の首を絞めることが責任だ」父親「私は誰も殺しません。私にはできません」約3年間の“狂乱”の音声データ、証拠として提出…犯行認識は「おじさんの頭を持って帰ってきた」の後、娘に従うしかなかった関係を父親証言へ ススキノ首切断事件
北海道放送 / 2024年6月30日 7時11分
-
2台湾から「能登応援」被災1万世帯超に見舞金 NGO団体が配布開始
産経ニュース / 2024年6月30日 7時0分
-
3面識のない男性を“結婚相手”と思い込んだか 男性の部屋に侵入した40代の女を現行犯逮捕
STVニュース北海道 / 2024年6月30日 10時28分
-
4粗大ごみから出た現金を職場懇親会に流用、黙認した処理施設係長を懲戒処分
読売新聞 / 2024年6月29日 15時48分
-
5「異常な状況」旭川いじめ問題 再調査報告書完成も提出は保留…“黒塗りなし報告書”流出受け
STVニュース北海道 / 2024年6月30日 15時39分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)