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ネットの闇はいつ晴れる(上)こんな日本に誰がした その6

Japan In-depth / 2023年12月2日 18時4分

 もともと彼らの「ガッツch」なるサイトでは、痴漢や盗撮、いわゆる転売ヤーを取り押さえる、といった動画を連投して、前述のように一部ネット民からの支持も集まっていたわけだが、漏れ聞くところによれば、警察はかなり以前から彼らの行為を問題視し、模倣犯が増える前に立件する方針を固めていたらしい。


 元刑事という人がニュースサイトで語っていたが、痴漢を現行犯逮捕するというのは、経験を積んだ捜査員でもなかなか難しく、逆に言えば冤罪の可能性がついて回るのである。


 仮に、取り押さえられた人物が本当に痴漢であったとしても、その顔をネットで晒してよいか否かはまた別問題で、そもそも名誉毀損罪とは、


「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁固または50万円以下の罰金に処する」(刑法第230条)


 ということなのである。事実であるか否かは問題ではないのだ。


 ならば犯罪報道などは、みんな名誉毀損になってしまうのではないか、と思われるかも知れないが、実は230条2の1項に「真実性の証明による免責」という規定がある。公共の利害(犯罪はもちろん該当する)に関わることを公益目的で摘示した場合(報道はこれに該当する)は、その内容が真実であることを証明できれば罰せられない。


 当の私人逮捕系が、刑法の条文まで熟知しているとは考えにくいが、今後もし起訴されて裁判になった場合に、被告・弁護側が、


「〈性犯罪撲滅〉を掲げて動画投稿をしていたのだから、明らかに公益目的であった」


 などと主張する可能性は捨てきれない気がする。


 たとえタテマエでも「正義」を振りかざすあたり、本連載でも幾度か問題にしてきた「迷惑系」よりたちが悪いと言うべきか。


 彼らはYouTubeからは事実上の追放処分を受けているが、逮捕とこうした処分によって、本当に模倣犯を根絶できるかは、いささか疑問だと言わざるを得ない。幾度も述べるようだが、こうした「正義」に喝采を送る人たちは一定数存在するし、痴漢や盗撮の被害者にしてみれば、その喝采も的外れとは言えないだろうから。


 要は、最初から動画を投稿して収益を稼ぐことが目的なのに、社会正義だと言い張ることが問題なのだ。


 もともと駅構内での無許可の撮影は、厳密には不法行為なので、マスメディアがいわゆる旅行系番組などで撮影する場合は、ちゃんと許可を得ているのであるから、これを周知徹底し、罰則規定を設けることも視野に入れてはどうだろうか。


 私人逮捕系とはだいぶ趣が違うが、いわゆる「撮り鉄=鉄道写真マニア」の迷惑行為も目に余る。彼らはむしろ、ネットでは袋だたきに遭っている感があるのだが、鉄道会社や一般の乗客にとっては存在自体が迷惑だとも言えるのだから、その対策としても有効だ。


 こういうことを述べると、表現の自由との兼ね合いはどうなのか、という問題提起をする人が現れそうだ。その話は、次回。


トップ写真:イメージ(本文とは関係ありません)


出典:metamorworks/GettyImages


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