日本の株式市場、人的資本経営が鍵
Japan In-depth / 2023年12月3日 4時4分
そうした業界においては、数少ないプロフェッショナルの一人である「ひふみ投信」の藤野英人氏の「Foresight」8月号の「『日本株10万円時代!?』日本株の上昇どこまで続く?高井さんが聞く」の指摘が、日本株市場では話題になりました。有料の会員記事(「日経平均10万円時代」のシナリオとは)ですが、以下ポイントです。
・「漢方薬』のようなガバナンス(企業統治)改革によって「スリーピー」だった日本企業の意識が変わり、「ウォーレン・バフェット氏」の3年前の商社株買いを契機に海外投資家の目が日本株に向いた。
・藤野さんが2000年頃に多くの日本の大企業の経営者と話したときは、勲章、健康、ゴルフのスコアの話しかしないような経営者が多かった。どうやって自分の会社が社会に貢献するのか、どうやって株式市場の評価を高めるか、に変わってきている。
■日本企業におけるガバナンス改革
「失われた30年」の下、日本の多くのサラリーマン企業経営者は「何もしないこと」に対する罪悪感よりも、投資などのリスクを冒して失敗したときの批判を恐れるというマインドが支配的で、縮小均衡、コストカット、賃金凍結などでお茶を濁してきました。
しかしながら、例えば東芝におけるゴタゴタなどに象徴されるように、「コーポレートガバナンス」(企業統治)の恐ろしさ、即ち、「行うべき経営戦略を実行ぜず、利益を挙げられなければ罷免」という欧米の慣行が、日本の株式市場にもヒタヒタと浸透してしまっていることに株式市場が気づいたと言っても良いでしょう。
企業価値を上げられる経営をしていない経営者は、投資家から、事業ポートフォリオの改変を強く迫られ、従わなければ株主総会での重任決議で否定票を投じると脅され、巨額の資金を持つ内外のファンドからTOBを仕掛けられたりする時代になったのです。
11月26日(日)の日経新聞の記事「MBO、最高の1兆円 今年、大正製薬やベネッセ相次ぎ 東証・物言う株主圧力」は、経営方針に対する株主の厳しいチェックに耐えかねた経営者が非上場化を選択しているという内容ですが、正に日本企業の経営者の「コーポレートガバナンス」への認識が高まっていることを象徴しています。
この「ガバナンス」についての企業経営者の対応の変化を見て、政府としても、企業セクターを活性化していくために大金を使った「産業政策」を行うよりも、投資家(株主)、証券取引所からのプレッシャーの方が広く確実に産業界に影響力を及ぼすことが出来る成功体験になったのではないでしょうか。
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