キッシンジャー氏のベトナム離脱の大失態
Japan In-depth / 2023年12月13日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米外交戦略での超大物キッシンジャー氏が100歳の長寿を終えた。
・キッシンジャー外交の失態は、氏が進めたベトナム和平。
・後にベトナムでの同盟国の喪失は大きな誤算によるとして自らの失態を何回も認めた。
アメリカの外交戦略での超大物とされたヘンリー・キッシンジャー氏が100歳の長寿を終えた。11月末の逝去だった。元国務長官、元大統領補佐官のキッシンジャー氏はその明晰な頭脳、冷徹な戦略、精緻な外交感覚などを賞賛された。彼の実績としてはまずアメリカを中国と接近させた対中外交、そしてベトナム戦争を終結させた和平交渉などが筆頭とされた。
そのキッシンジャー氏の外交の軌跡への論評は日本国内でも大量だった。そのほとんどが彼の実績を輝かしい成果のように賞賛していた。だがキッシンジャー外交には巨大な負の部分もあった。功罪のなかでの罪といえる局面も顕著だった。とくに私にとってはベトナムでの戦争とその終結を現地で実体験した立場からキッシンジャー外交の失態を指摘せざるを得ない。
キッシンジャー氏の死去は私にとって半世紀も前の南ベトナムでの彼との対面をいやでも想起させた。その記憶はキッシンジャー外交の大きな「負」の回顧となる。キッシンジャー氏の外交の功罪で大きな功とみなされがちなベトナム和平交渉の歴史的な失態を現地で目撃した体験は決して忘れることができない。
1972年夏、私は南ベトナムの首都サイゴン(現ホーチミン市)駐在の特派員だった。毎日新聞の記者だった。キッシンジャー氏は戦争が下火となったその時期、パリでの北ベトナム(ベトナム民主共和国)政府代表との和平交渉を進め、その状況を同盟国の南ベトナム(ベトナム共和国)政府に伝えにきていた。長年、続いてきたベトナム戦争、とくにアメリカの大規模な軍事介入を終わらせそうな秘密の交渉がパリで進んでいたのだ。アメリカはその進展状況を同盟国である南ベトナムに事後報告として伝達していたのだ。
戦争の最大の当事者であり、被害者でもあった南ベトナムは自国の運命を決めるこのパリでの交渉からは外されていた。全面支援を受けてきたアメリカが停戦や和平に向けても絶対の権限を有していたのだ。
当時のサイゴンに駐在する各国の報道陣にとって当然ながらこのパリでのアメリカ・北ベトナムの交渉の内容は最大の関心事だった。その内容を熟知するキッシンジャー氏がサイゴンへ来訪すれば、彼の口からなんとかしてこの交渉の中身を語らせようと必死になるわけだった。
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