社会保障が負担と給付の分水嶺になる【2024年を占う!】経済:社会保障
Japan In-depth / 2023年12月28日 7時0分
渋川智明(東北公益文科大学名誉教授)
渋川智明の「タイブレーク社会を生きる」
【まとめ】
・2024年は団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」の前年。
・少子化対策は待ったなし。医療、介護保険の報酬改定アップと連動する負担増は避けられない。
・国民負担率50%に近づく。2024年は分水嶺。税と保険料の一体的見直しに与野党挙げて取り組む時期。
2024年は団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」の前年に当たる。社会保障費は新年度予算歳出の3割を占め、アップし続けている。さらにその先には団塊ジュニアが高齢者になる「2040年問題」が控える。一方で少子化対策は待ったなしの状態だ。給付と負担を根底から見直さざるを得ない。
社会保障は主に税金が財源の扶助(生活保護)、児童・障害者福祉など社会福祉制度と、保険料を支払いリスクに備える医療、介護、年金、雇用保険など社会保険がある。
■ ダブル改定で保険料アップ
2024年は社会保障の大きな柱である2年ごとの医療保険の診療報酬改定と、3年改定の介護保険報酬が6年に一度の同時改定を迎える。税金が財源の障害者福祉報酬を加えるとトリプル改定になる。さらに2025年は年金の財政再計算が控えている。
与党は年末の時点で診療報酬本体、介護報酬とも引き上げの方向で固まった。診療報酬は薬価をマイナスとして全体ではマイナス改定だが、医師や看護師らの人件費にあたる本体部分は0.88%引き上げ、介護報酬は1.59%のアップで、ホームヘルパーやケアマネジャーら介護職らに充てる。厳しい医療、介護職の処遇改善や人材流出を防ぐ。それはもちろんOKだが、保険料アップ、サービス削減とも連動する。
■ 待ったなしの少子化対策
今年1年、政府では防衛費増額、少子化対策、万博経費など大型支出が計画された。今年の世相を表す漢字は「税」。物価高が生活を直撃し、増税批判が起きた。税制改正大綱で一人4万円の定額減税を打ち出した。富裕層の金融所得課税は見送っている。防衛増税も先送りされた。しかし少子化対策は待ったなし、喫緊の課題だ。
少子化対策加速化プランは対象者の所得制限など議論の余地は残されているが、政策の実施は切迫している。2024年度から3年間、3.6兆円の予算で児童手当や育児休業給付、多子世帯の大学授業料の無償化などが盛り込まれている。
岸田政権は「増税メガネ」批判で支持率が急落した。消費増税、法人増税、赤字国債が困難なのは目に見えている。しかし少子化対策費として、その財源は、どこかで予算の辻褄を合わせなければならない。そこで社会保険料の負担増にレンズの焦点を向けたのだ。
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