中国軍核戦略のAI依存の危険性
Japan In-depth / 2023年12月28日 11時0分
そんな年次報告書が2023年は米中首脳会談の直前の11月14日に発表されたのである。700頁以上の同報告書は中国の他国の政治への介入や経済的野望、軍事力強化などバイデン大統領と習近平国家主席の会談では表に出なかった厳しい現実をあらわにしていた。
なかでもアメリカの政府と議会への政策勧告を含む超党派のこの報告書が最大の警鐘を発したのは、中国人民解放軍がアメリカ軍の優位を崩すためにAIを大幅に使うことが将来、アメリカ側にとって危険な状況を生む、という点だった。この点は年次報告書発表のための記者会見で強調された。
同委員会の副委員長アレックス・ウォン氏が冒頭の発言で以下のように述べた。
「今年の報告書も中国がアメリカの安全保障の根幹を脅かす行動や計画に光を当てているが、なかでもアメリカ側としてもっとも警戒すべきは中国軍の軍事作戦へのAI採用だといえる。中国人民解放軍は通常戦力、核戦力の両方の効率の飛躍的な上昇を果たすためにAIへの依存を大幅に増すことをすでに始めている」
ウォン氏はこれまでアメリカの政府と議会の両方で中国をはじめとする東アジアの安全保障問題を追ってきた専門家である。同氏はこの中国軍のAI利用ではとくに核戦略へのその導入が危険だと強調するのだった。
その点は同じ委員会の委員ランディ・シュライバー氏も同様に警告し、とくに核戦略の分野でのアメリカ側にとっての危険性を重視すべきだと説明した。シュライバー氏は日本側でもよく知られたアメリカ歴代政権の国務、国防両省の高官を務めた人物である。
「中国軍が最悪の事態としてアメリカ側への核攻撃を考える際、AIへの全面依存でその決定が敏速かつ自動となり、人間の配慮が入る余地が減る危険が予測される。その場合のAIは核攻撃の標的となりうる対象のイメージ捕捉やその照準確定に使われるだろう」
同年次報告書もこの点、中国軍の核戦略ではAIが敵側のイメージの認知や標的の確定に大幅に使用され、その結果の攻撃決定が自動的に速度を高めるという危険性を強調していた。とくに台湾攻略にからむ小規模の戦術核兵器の使用の決定にそんな可能性が懸念されるという。
アメリカ側は一方、これらの核の最終決定に関しては、あくまで人間の判断を優先すべきだ、というのだ。
報告書は中国側が米側の優位な潜水艦戦力や宇宙利用攻撃能力に関してもAIを重用すると指摘していた。中国軍はアメリカ側の水中戦力に対してすでにAI依存の自律型無人潜水機(UAV)を急速に開発し、配備してアメリカ海軍の潜水艦の探知や妨害に着手し始めたという。この分野でもアメリカ側の年来の優位が中国軍のAI利用によって崩れかねない新情勢が生まれたというのだ。
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