トランプ嫌悪症を排する時
Japan In-depth / 2024年1月23日 12時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・アイオワ州でトランプ氏の地滑り的大勝利は、有権者の多くが民主党側メディアの酷評・悪評を信じていないから。
・民主党寄り陣営のトランプ氏嫌悪症はいまや恐怖症へと変質しつつある。
・恐怖症のメディアは「トランプ氏ならNATO離脱」と警告。実際は在任中「NATO強化」策を実行。
アメリカ大統領選挙の予備選がついに始まった。中西部のアイオワ州で1月15日、共和党の党員集会が開かれ、有権者たちの票が実際に投じられた。
全州合計99郡、集会投票所1000数百ヵ所での投票でドナルド・トランプ前大統領が全体の51%と、過半数を越える圧倒的優位の票を集めた。99郡のうち98で首位となったのだから圧勝だった。2位のロン・デサンティス・フロリダ州知事、3位のニッキー・ヘイリー元国連大使はそれぞれ、20%、19%という得票率だった。トランプ氏の地滑り的な大勝利と評するのが適切である。
この結果をどうみるか。
今回のアイオワ州でのイベントは2024年大統領選での初めての草の根での実際の投票だった。これまでのアメリカ国内で大統領選に関して起きてきたこと、語られてきたことは、2024年選挙に関してはすべて仮想だともいえる。民主主義の選挙の基本である実際の投票がなかったからだ。だからこそこのアイオワ州での投票を重視せざるをえない。
今回の草の根投票で実証されたことは、どうみてもトランプ前大統領への共和党側主体とはいえ、圧倒的な支持の高さ、強さだった。この投票ではトランプ氏は無党派層の間でも人気が高いという結果も出たのだ。
トランプ氏についてはアメリカでも、日本でも主要メディアでは「独裁」とか「非民主的」という酷評が伝えられてきた。トランプ氏はアメリカの4州で刑事事件の起訴対象ともなってきた。そのうえにトランプ氏が大統領に再選されれば、アメリカの最重要の対外同盟の北大西洋条約機構(NATO)を破棄するだろうとも警告されてきた。
ではアメリカ有権者たちはなぜそんな乱暴で危険な人物を再び大統領に選ぶという意思を表明したのか。この問いへの簡単な答えはアメリカ有権者の多くは、その種のトランプ氏への酷評、悪評を信じていないから、ということになる。トランプ支持のアメリカ国民はその種の酷評、悪評を民主党陣営、とくに主要メディアによるプロパガンダとみているのだ。プロパガンダなのだから事実と異なる部分が多い。
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