医師の働き方改革
Japan In-depth / 2024年1月24日 9時47分
上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・東日本の地方の医師不足は深刻だ。
・医師の働き方改革は、若手医師を大病院から解放すること。
・日本の医療提供体制の議論で欠けているのは、患者や現場で働く若手医師の声だ。
能登半島地震が発生してから、3週間が経過した。200人以上が亡くなり、大勢が避難生活を送っている。
東日本大震災から13年、我が国は高齢化が進み、独居者や要介護者が増えた。在宅医療を受けている人もいる。住民の背景が変われば、災害時に必要な対応も変わる。能登半島地震で、福祉避難所の重要性が強調されるのは、このような社会の変化を反映したものだ。
災害に強い社会を作るにはどうすればいいのか。私は、有事に対応出来る人材の層を厚くするしかないと考えている。その際、医師数は重要な指標だ。
残念なことに、日本は医師不足だ。特に東日本の地方の医師不足は深刻だ。私が活動を続けている福島県浜通りの場合、相双地区の人口10万人あたりの医師数は143人だ。全国平均(257人)の56%で、発展途上国並みだ。
このような地域の医療が危機に瀕している。それは今春から医師の働き方改革が実施されるからだ。原則として、医師の年間の残業時間が960時間以下、月100時間未満に制限される。医師の総労働時間が減るのだから、医師不足は悪化する。
厚労省は医師のアルバイトの時間まで規制する方針を示しており、大学病院からのアルバイト医師の派遣に依存していた相双地区の病院の中には、診療の継続が困難になるところも出てくるだろう。
私は、医師の働き方改革のためには、労働時間の規制の前にやるべきことがあると考えている。それは、医師、特に若手医師を大病院から解放することだ。
私が、このように考えるようになったのは、昨年8月、神戸市の甲南医療センターに勤務していた20代の内科専攻医が自殺したのがきっかけだ。労働基準監督署によれば、この医師は、自殺前1カ月間の時間外労働は207時間におよび、国の精神障害に関する労災認定基準の160時間を大きく超えていた。また、休日を取得していない期間は約3カ月に及んでいた。
読者の中には、「なぜ、甲南医療センターを辞めて、別の病院に移らなかったのだろうか」と思われる方も多いだろう。この医師は、後期研修医だ。一人医長のように自分が辞めれば、地域医療が崩壊するわけではない。医師免許があるのだから、転職は容易だったはずだ。
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