令和6年能登半島地震後の輪島市・福祉避難所の状況 ~東日本大震災を経験し、支援者側の立場から見えた現場の実態~
Japan In-depth / 2024年1月28日 11時0分
そのため、常駐スタッフだけでは避難者の対応が間に合っておらず、常駐スタッフに加えて外部からの支援団体(医療法人社団オレンジ、全国訪問ボランティアナースの会 キャンナス、特定非営利活動法人ぐるんとびー/株式会社ぐるんとびーなど)・DCAT等災害派遣チームを中心に、ほぼ24時間体制で運営が行われていました。
震災後、いち早くから海と空で避難所設営と運営協力を行なっている医療法人社団オレンジの紅谷浩之医師は、「現場ではとにかく人手が足りていないです。福祉避難所は、福祉と医療の間のようなケアと運営が必要なため、様々な職種の総合力で形にしていく必要があります。」と現場の人手不足を訴えていました。
海と空は、私が滞在していた期間、水道が通っていませんでしたが、電気は通っており、施設内の暖房、食事は保てている状況でした。しかしながら、避難所運営に際して問題は山積みです。避難者は畳に雑魚寝であり、プライバシーの確保は困難でした。外部からの支援者は、車中泊か倉庫の空いているスペースで寝なければなりません。
また、断水のため、コロナウイルスやインフルエンザ陽性者の受け入れを行っているものの、十分な手指衛生が困難です。排泄に関しては、洋式便座に40L程度のゴミ袋を二重で被せ、その上に尿吸収パットを敷いたセットを作成し、毎回交換して排泄を行う必要があります。このように衛生環境が十分でない状況で、できる限りの感染症予防を実施していました。
現場では、理学療法士としてだけでなく、マンパワーを補う人材として職種に捉われない動きが求められました。
医療的な関わりとしては、避難者の深部静脈血栓症・健康状態のスクリーニング、個別・集団での軽運動の実施、避難所内でのベッド配置の検討と車椅子等の動線の確保、食事・排泄介助、他の避難所から転入される要配慮者の移動介助を行いました。
その合間には、支援物資の運搬と整理、簡易ベッドの設営、避難所の環境整理(簡易トイレセットの交換、トイレ・廊下の感染対策)を行い、気づけばあっという間に時間が過ぎているような状況でした。
また、これらの避難所運営を行なっている際にも、様々なイベントが生じます。
「xxさんが避難所のどこにもいない!」という運営スタッフの声や、「お兄さん、食事はまだ来ないのかい? トイレはどうやって流せばいいんだい?」という避難者の問い合わせの声、「今から物資を搬入するので、物資の配置場所と隊員の動線を確保してもらいたいです!」という自衛隊や外部からの支援者の声が次々と聞こえてきます。
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