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なぜ逃げ切りを許したのか(中)失敗から学ぶことは多い その2

Japan In-depth / 2024年2月9日 17時0分

翌日、彼女のルームメイトが、連絡が取れないとして警察に相談。自室を調べたところ、当時28歳だった市橋達也なる男とメールのやりとりをしていた痕跡が見つかり、捜査員がマンションを訪れた。





ところが市橋は、刑事たちの制止を振り切って非常階段から逃走。翌日、公開指名手配され、後に懸賞金100万円(その後1000万円まで増額)まで提示されたが、逮捕されたのはおよそ2年半後、2009年11月10日のことである。





この容疑者も、もののたとえではなく実際に裸足で逃げ出したと報じられ、その後3ヶ月あまりも行方が分からなかった時点で、私は友人のジャーナリストと、





「誰かが匿っているか、もしくは人知れず自殺してしまったか、どちらかだろうな」





などと言い交わしたのを覚えている。しかし実際には、整形手術をしたり、無人島で自給自足の生活をしたりして逃避行を続けていたわけだ。





その市橋受刑者(2012年に無期懲役が確定)も、神戸市内の建設会社に住み込みで雇われていたことが分かっている。社長が手配写真を見て、





「数日前まで住み込みで働いていた男が、よく似ている」





と通報し、捜査員が駆けつけたのだが、寮に戻ることはなかった。





ちなみにこの会社だが、身元のはっきりしない人物を雇っていた、ということで、元請けなどから仕事を切られてしまい、くだんの社長は、





「市民の義務として通報しただけなのに……」





などと納得の行かない様子であったと報じられていた。





旧友の一人に、実家が内装関係の工務店を営んでおり、住み込みの職人さんも雇って、本人もその会社に在職していた者がいる。かなり前に社長(父親)が脳溢血で倒れ、親族会議の結果、会社を清算してしまったので、今さら迷惑にもなるまいと、業界の内情を聞かせてもらった。住み込みの従業員を雇うに際して、身元の確認などはどうしていたのか、と。





「(採用は)社長の専権事項だったから、詳しく分からないところもあるけれど」





と前置きしながらも、





「なにしろ人手を確保するのが先決だし、仕事の出来る人は取り合いになる、という世界だから。山谷でスカウトしてきた人までいたからね」





などと教えてくれた。





東京の山谷、神奈川県なら横浜市の寿町、大阪なら西成、といったように、日雇い労働者が利用する簡易宿泊所が建ち並んだ、いわゆるドヤ街が存在するが、そこでまずは日雇いで人手を集め、この人は真面目だと見込むと、





「うちの専属で働かないか」





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