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なぜ逃げ切りを許したのか(中)失敗から学ぶことは多い その2

Japan In-depth / 2024年2月9日 17時0分

と持ちかけるのだという。こういう人なら安く使えるし、雇われる側にとっても、住み込みならば仕事がない日でも雨露をしのぐ部屋はある、ということで、まさしくWinWinの関係だというわけだ。警察の方から身元の照会などはなかったのか、とも尋ねたが、





「記憶にないねえ」





とのことであった。





決して旧友の身びいきではなく、業者側のこうした事情も、理解できないことではない。





ただ、建設会社というのは(業種が多岐にわたることも知っているが)、他人様の敷地内、時と場合で家屋の中まで入って仕事をするわけだから、身元が確かでない人を雇うというのは、やはり厳に慎んでもらいたいものだ。





話を戻して、市橋達也は2年半ほどの逃避行の末に逮捕されたが、桐島聡容疑者は49年にわたって逃げおおせることができた。





彼の生活ぶりが明らかになるにつれ、市橋受刑者にも改めてスポットを当てる報道が見受けられたが、元刑事といった人たちの見立てによると、





「市橋は少々動きすぎた」





ということになるらしい。整形外科医院に飛び込んで顔をいじったり、フェリーで幾度も沖縄を訪れたりしていれば、なにしろ手配写真がそこら中に張り出されているわけで、通報されるのも無理はない、というわけだ。





この点、桐島聡容疑者は何十年も住み込みで働き続け、地域にも溶け込んでいた。





そもそも論から言うならば、何年も何十年も消息が分からない人は、一般に考えられているよりもかなり多いのである。





警察庁が昨年発表したところによると、2022年に全国の警察署が捜索願を受理し、行方不明者とされた人数は8万4912人。1956(昭和31)年からの統計があるが、2020年には最低を記録したとされるが、それでも7万7022人である。





過去10年間、ほぼ横ばい(8~9万人)で推移しているのだが、内訳を見ると、認知症を患った高齢者の割合だけは増加が著しいそうだ。





以前何かのドラマで、年間9万人以上が行方不明になっているわけだが、





「その1%が殺されていると仮定すると、毎日3件ほどの完全犯罪が成立していることになる」





などという台詞があったのを覚えている。





もちろんドラマの台詞だから、裏付けとなるデータなどあるはずもないが、現実問題として、北朝鮮による日本人拉致が、なかなか明るみに出なかったのも、こうした行方不明者の多さと無関係ではないし、拉致が疑われる「特定失踪者」とされていた女性が、実は同僚に殺害されて、犯人の自宅の床下に埋められていた、という案件も実際にあった。





もちろん、捜索願を受理しただけの案件と指名手配者とでは、条件がまったく違うのだが、失踪者の中には何らかの事情で身を隠している人も相当含まれているはずなので、警察の努力が足りなかったとは言えないだろう。





しかしそれだけでは、桐島聡容疑者が半世紀近くも潜伏できた理由の説明にはならない。





次回、他の指名手配犯の状況とも照らし合わせて、もう少し詳しく見る。





トップ写真:東京の英国大使館で記者会見するリンゼイ・アン・ホーカーさんの父ビル・ホーカーさん(2009年3月24日 東京)出典:Junko Kimura/Getty Images




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