ECで地域を救えるか 立ちはだかる課題とウェルビーイングについて考える
Japan In-depth / 2024年2月11日 23時0分
だが、それではウェルビーイングの観点では不十分であると示唆したのは南雲岳彦氏。「誰かの手を借りずに生きていける健康寿命と人が幸せかどうかの間にはほとんど関係がない」と、主観と客観の間に存在するギャップについて指摘した。
幸せや生きがいは、誰かに感謝されたり役に立っていると感じたりすることで得られるものであり、サービスが拡充するだけでは街としては再生せず、主観と客観の両方のデータを見ながら進む必要性があるという。
▲写真 一般社団法人スマートシティ・インスティテュート専務理事の南雲岳彦氏 ©Japan In-depth編集部
では、地域はどのように活性化していけばいいのか。大学のイノベーションハブ化と海外進出が鍵となる可能性が語られた。
イノベーションを推進する大学は多い。海外には大学を中心にイノベーション企業が集まり街全体が活気付いている場所もあるという。
また、自覚していない地域の良さを強みにして国内外へ売り込んで成功しているケースもある。例えば、広島県の尾道市瀬戸田のレモンは皮まで食べられる希少性の高いレモンであり、香りまで楽しめるとしてプロの料理人から重宝されている。
さらに視野を広げ、海外を目指してもいいだろう。例えば、インドネシアは人口が増加傾向にある。学校や病院といった街全体を整える必要が出てくるため、日本で培ったインフラやデジタルの力を統括して配当金を得るのも考えられるだろう。
▲写真 シンポジウムの様子 ⒸJapan In-depth編集部
■ 地域をECで活性化するために
「地域をECで活性化する」と一言で言っても、その意味はひとつではない。人口減少によりインフラが不便になりつつある地域でECを使い生鮮食品を手に入れることも、生産物をECを使って販売することも含まれる。
ECだからこそ海外にリーチし、外貨を稼ぐことも可能だ。とはいえ、それらは簡単な話ではなく、個人がECサイトを立ち上げてもネットの大海の中では顧客にうまいこと見つけてもらえないために巨大なプラットフォームに載せることは必要だろう。
また、デジタル化が問題解決のゴールではなく、デジタル化の前に収益化の仕組み作りが不可欠だ。そこには、「安売りするのではなくプレミア感を出す」アプローチが重要だと前述の南雲氏は言う。
そして、いいものを「いいもの」という漠然とした表現で終わらせるのではなく、なぜいいのかをデータサイエンスを積極活用することで底上げする必要性と、若者を産業に惹きつけるために、面白く感じてもらえるような土壌づくりや、そのための規制改革が不可欠だと言及した。
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