「シニアの戦力化」の現実 前篇
Japan In-depth / 2024年3月11日 18時0分
「将来不安に感じること」(複数回答可)では、回答者(就業者が69%)の約7割で「健康問題」と並んで「生活資金など経済面」が1位になっている
「70歳以降も働きたい」人が39%、「65歳以上」とすると66%と多い
一方、「将来の生活に必要なお金の問題に備えてどのような取り組みをしているか」(複数回答可)との問いに対しての「長く働くための技能向上」については、14%に留まっている
回答者はシニアに限定されているわけでもなく、就業者でない人も約3割いる中での回答ではありますが、日本人の学び直し意欲は極めて低い状況であることが見て取れます。
一般的に、学ぶことにそれほど抵抗が少ないであろあう若年層も加えた調査であるだけに、シニア層の学び直しへの意欲はまだまだ高まっていないというのが肌感覚も含めた現状のように思います。
大企業におけるシニアの学び直しが進まない理由
大企業のシニア社員が学び直しに積極的になり、自社だけではなく社会で活躍するようになれば、産業界の景色も随分変わるように思いますが、では、なぜ大企業のシニア社員は、学び直しに消極的なのでしょうか?
一言で言えば、「昭和の人事制度」の下で長らく働いてきたシニア社員には、学び直しというものがこれまでのビジネスライフでの流儀と相容れないものだということです。
具体的には、
自分のキャリア形成に関しては、長らく会社任せであって、自らのキャリアを考え、将来のキャリアのために主体的に学び直すという経験が乏しい
社内調整を始めとする人間関係に関することなどがメンバーシップ型雇用の下で働いてきた場合も多く、自社でしか通用しないスキル以外のスキルを学び、それで転職するということは不可能と考えている
そもそも、目先の業務に関する勉強は熱心だったものの、今後のキャリア形成に資する、担当業務とは直接関係のない勉強をする習慣が乏しい(転職10回の筆者の観察では、読書好きの方は一部で、シニア世代のほとんどのビジネスパーソンは読書ですらあまりしてこなかった)
学び直しの先に見える「転職」については、経験が乏しいだけに「恐い」という意識が強く、転職を有利にする学びには興味がない
大企業の中で戦力外になっても、それなりに報酬や地位は保障されており、また社会においても大企業の社員であるということはステータスになっている
これまでは大企業においては給付の厚い企業年金が用意されており、公的年金や貯金と併せれば、学び直しまでして新たに働くというインセンティブが乏しい
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