ロシア軍、量で押し切るか(上)3年目に入ったロシア・ウクライナ紛争 その1
Japan In-depth / 2024年3月18日 19時18分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・ウクライナは敗戦の憂き目を見るとの観測が流れるようになってきた。
・ロシア国内で軍需品の増産は急ピッチで進められ、成果もめざましい。
・ロシアが再度の大攻勢に打って出ると、今度はウクライナ軍の砲弾不足が致命的になる。
2月24日をもって、ロシアとウクライナとの紛争は3年目に入った。
2022年のこの日未明、ロシア軍が侵攻したのである。ただ、プーチン大統領は、これは戦争ではなく「特殊軍事作戦」であると繰り返し強調していた。
もともとロシアの憲法では、国境の外で戦争を遂行する場合、議会の承認が必要であると定められていたのだが、プーチン政権下で行われた改正により、大統領権限が強化され、逆に言えば前述の条文などは形骸化している。したがってプーチン大統領の発言は、国内向けのプロパガンダだと見て間違いないだろう。
どういうことかと言うと、やはり憲法の規定により、戦争となれば国家総動員体制に移行するので、全国民を軍務や勤労奉仕に駆り出すことが可能となる。さすがのプーチン大統領も、そこまでやると国民の反発が恐ろしい、と考えたのだろうか。
もちろんこれも、多分にタテマエの話で、さらに言えば今次の大統領選挙で「予想通り」圧勝した場合には、どう転ぶか分からない、という要素もあるのだが(この原稿は開票前に書いているので)。
いずれにせよ3年目を迎えた紛争だが、戦局は二転三転、今年に入ってからは「ロシア有利」と見る向きが増えてきている。
当初、具体的には侵攻開始から2週間経っても「電撃戦でキーウを占領する」という戦略目標が達成されず、そればかりか大打撃を被ったことから、ロシアの戦略は完全に挫折した、と断ずる向きが多かった。
とりわけロシア製(旧ソ連製が多い)兵器が、ウクライナがNATOから供与されたそれにまったく太刀打ちできなかったこともあって、
「ロシアの軍需産業は、今後200年は立ち直れないだろう」
という意見まで、日本のエコノミストの間から聞かれたほどだ。
こうして昨年夏、ウクライナ軍はロシア軍および親ロシア派武装勢力の支配下にある領域を全て奪還する、との戦略目標を掲げた「反転攻勢」に打って出たが、こちらも年末までには挫折が明らかとなってしまった。
以前にも当連載で紹介させていただいたが、ロシア兵は伝統的に防御戦闘に強い。今次の紛争でも占領地域の一部から撤退するなど戦線を整備し、英戦略研究所が「軍事常識からいささか逸脱した量」とまで評したほど大量の対戦車地雷を埋設して、ウクライナ軍の攻勢を阻止したのである。
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