「幻の名戦車」T-14とは 3年目に入ったロシア・ウクライナ紛争 その3
Japan In-depth / 2024年3月21日 18時40分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・ロシア政府筋、最新鋭戦車T-14の量産を当面見送る、と発表。
・軍需産業最大手ロステック社が「T-14がウクライナに投入されることはない」との見通しを明らかに。
・ロシア軍が「質より量」の発想で、ウクライナを圧倒できると考えているとすれば、ソ連邦が犯した過ちからなにも学んでない。
ロシア軍は兵器など軍装品に関して、ソ連邦の時代から「質より量」という発想に立っていた、と述べてきた。それを象徴するのが、最新鋭戦車T-14の量産を当面見送る、という政府筋からの発表である。
具体的には、ロシア最大の国営コングロマリットで、軍需産業の最大手でもあるロステック社が公営メディアの取材に対し、
「T-14がウクライナに投入されることはない」
との見通しを明らかにしたもの。
T-14は2015年に初めて公開された最新鋭の戦車で、世界で初めて無人砲塔を採用し、将来的には遠隔操作できるようにして、無人兵器としての運用も視野に入れているとされ、初の第4世代戦車とも呼ばれる。
ごく大雑把な解説でお許しを願いたいが、1950年代に登場した、90ミリ砲装備の戦車が西側第一世代。一方、前回も紹介したT-55が東側第一世代だが、こちらはより強力な100ミリ砲を装備していた。
これを受けて当時、(「100ミリ砲ショック」ということが実際に言われた)西側諸国は105ミリ砲装備の戦車を配備するようになり、これが西側第二世代と称される。するとソ連邦は、115ミリ砲を搭載したT-62を登場させ、東側第二世代と称された。いずれも1960年代の話である。
わが国の自衛隊はと言うと、第二次大戦後に初めて国産化した61式戦車が、その名の通り1961年から量産が始まったが、これは90ミリ砲装備の戦後第一世代で、言い換えれば世界の趨勢より「周回遅れ」で登場したことになる。
そして1970年代に入ると、まずはソ連邦がT-72の配備を開始。厳密には71年から72年にかけて各種試験が行われ、73年から量産が始まったらしい。125ミリ砲を装備し、かつ世界で初めて採用された自動装填装置によって、3名の乗員で運用できるようになっていた。装填手が不要となったのである。
西側では、ドイツのレオパルト2が当時すでに開発中で、こちらは120ミリ砲装備だが、夜間暗視装置など、総合的な戦闘力では勝るであろうと、当時すでに言われていた。これらが第三世代戦車と称される。
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