「幻の名戦車」T-14とは 3年目に入ったロシア・ウクライナ紛争 その3
Japan In-depth / 2024年3月21日 18時40分
これお分かりのように、冷戦時代は10年刻みで「世代交代」があったものが、1980年代以降は、西側戦車の更新は事実上なされなくなった。あれから40年、第三世代戦車がアップグレードを重ねつつも未だ現役なのだ。
冷戦の先行きがそろそろ見えてきたという理由が、おそらく最大のものであろうが、戦車の性能自体がピークに達したという判断もあったのではないかと思われる。
たとえば主砲だが、西側ではドイツとフランスが共同開発に乗り出し、ごく最近イタリアも参加の意思を表明した次世代主力戦車は、130ミリ砲と自動装填装置を採用する構想であると聞く。現用120ミリ砲に比べて、有効射程距離が50%も伸びるが、砲弾重量はおそらく40㎏ほどにもなるので、どのみち人力で扱うのは無理がありそうだ。
ロシアとて例外でないことは、前述のT-14の主砲が、T-72シリーズと同じ125ミリ砲(改良型だが)であるという事実から容易に推察できるだろう。
そのT-14だが、車体前部に防弾カプセルと称される頑丈な内部装甲が施され、乗員3名(車長、操縦手、砲手)が横一列に搭乗する。中央部が戦闘室で、無人砲塔の他、戦闘機などに搭載される小型レーダーも装備し、周囲100㎞内外の地上及び空中の目標を探知できるという。後ろの機関部には推定2000馬力のディーゼルエンジンが搭載され、55トンの車体を路上最高速度80㎞近くで引っ張る。
ちなみに西側第3世代戦車は、最大級でも1500馬力で70㎞が精一杯のところだ。
実は米国もM1エイブラムス戦車の更新計画に着手しているが、やはり無人砲塔が採用される模様である。韓国の次世代戦車K3に至っては、まだ想像図の段階ながら、前から防弾カプセル、無人砲塔、機関部というレイアウトになっており、T-14とまったく同じである。おそらくこれが、次世代戦車のグローバル・スタンダードになるのだろう。
第二次世界大戦が勃発した当初まで、戦車は歩兵に対する火力支援を主任務とする重戦車(歩兵戦車とも呼ばれる)と、偵察などに使われる軽戦車(もしくは巡航戦車)とに分かれていた。
ところがソ連邦は大火力と高速を兼ね備えたT-34を登場させ、侵攻してきたナチス・ドイツの戦車隊を壊走させたのである。これにより、MBT(メイン・バトル・タンク=主力戦車)の時代が始まり、戦後も前述したようにソ連邦が開発する戦車が、常に歴史を書き換えてきた。
ところが、冒頭で述べたように現在のロシアは、この戦車の量産に乗り出すどころか、それは当分ないと言い切って、旧式戦車の再生に血道を上げている。
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