ボストン・ウェルネス通信 その6:閉経は、単なる健康的な加齢の一部
Japan In-depth / 2024年4月2日 23時0分
医学界では、例えば英国閉経学会、英国王立産婦人科学会、内分泌学会の共同声明では、「更年期を迎える女性が治療やケアについて十分な情報を得た上で意志決定できるよう、全体的かつ個別的なアプローチを適用する必要性を強調」しています(5)。
さて、ランセットは、「ほとんどの女性にとって、閉経は生物学的老化の一部として迎える人生の自然な段階です。そしてほとんどの女性は治療を必要とせずに閉経期を乗り越えます」と述べます。
閉経期ホルモン療法(MHT)は、更年期障害の血管運動症状(のぼせ、ほてり、発汗、冷えなどの症状)に対する最も効果的な治療ですが、リスクがないわけではありません。ランセットは、「しっかりした疫学的証拠によると、50歳から全身性の合剤MHTを服用している女性50人に1人、エストロゲンのみのMHTでは70人に1人の割合で乳がんが新たに発生する」と指摘します(6)。
そして以下のようにMHTの歴史を振り返ります。
●年配の女性は、単に若い女性のエストロゲン不足版ではない
20世紀初頭に、閉経は医学的にとらえられるようになり、女性のアイデンティティ(いわゆる女性らしさ)と心身の健康は、エストロゲンの過不足のバランスによって決まると考えられるようになりました。そして女性のさまざまな心身の不調は、ホルモンのアンバランスが原因であるとされました(そして今もそうである)。さらに、閉経後のエストロゲンを失うことは、個人的にも社会的にも有害であり、「アルコール中毒、薬物中毒、離婚、家庭崩壊といった計り知れない不幸」といった結果をもたらすと考えられていました。
そんな中、エストロゲン治療は、1900年代初頭の若返り運動やアンチエイジング運動の中で登場したのです。動物から抽出されたホルモンが、加齢による欠乏に対抗するために人間に注射されました。女性の場合、エストロゲンが、月経障害や生殖障害、妊娠合併症、精神病、うつ病などに広く処方されました。1940年代になると、妊娠中の雌馬の尿から抽出したHRT(現在では閉経期ホルモン療法(MHT)と呼ばれている)が、「不安定でエストロゲンが不足した閉経後の女性」のために広く推進されるようになったのです。
HRTは、更年期症状に対する初めての有効な治療法であり、多くの女性に直接利益をもたらし、若く閉経期をむかえた女性にとって長期的なメリットが期待できます。ただし『1975年のランセット』が予測したように、HRTは「大部分の女性を対象とした普遍的な治療という見込みは、製薬業界にとって明らかに恰好の商品である」ため、急速に普及しました。
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