情は人のためならず「想像を超えた難事の日々」海外邦人を支える元外務省医務官のメッセージ
Japan In-depth / 2024年4月8日 23時30分
トルコは1890年に軍艦エルトゥールル号が紀伊半島沖で遭難した際に、地元住民から手厚い救護をうけていました。イスラエルは“命のビザ”で有名ですが、外交官・杉浦千畝さんに数千人が救われています。こうした歴史的な事例を、トルコもイスラエルも現代の国民が皆覚えていて(教科書で教えられていて)、いざ日本に何かあった時はまっさきに助けに行こうという意思があり、駆けつけてくれたと聞きました。
そして台湾も、日本統治時代から多大な恩恵を受けていたとの認識が今の若い世代にも伝わっています。こうした、時を超えた国境を超えた支援の連鎖が、東北大震災への支援につながっていたのでした。「情はひとのためならず」を強く実感した事例でした。
さて、今、世界の中で困難を極めている国の人たち、アフガニスタン、ミャンマー、ウクライナ、ガザ等々、こうした人々のために我々は何ができるでしょうか? 助けを求めに来ている外国の人たちに“情”をかけることは、後々の我々の子どもたち・孫たちの世代が救われることに繋がるのではないかと考えています。
新型コロナでもわかった事ですが、感染症の広がるスピードがこれだけはやい現代では、途上国を含めた世界全体の人々が適切なケアをうけられないと、我々自身の健康も守られないという事実です。WHOがCOVAXというシステムを作り、ワクチンも必ず一定の割合で途上国に按分するようにメーカーに指示している事実につながっています。時代を経ずとも、今、現在の途上国支援が、我々の健康にも繋がっているのです。
当方自身、医師としては10年弱の経験しかなった状況でのミャンマー赴任であり、唯一の日本人医師、究極の“ドクターコトー”でした。目の前の専門外の領域の患者さんに、看護師の手助けも他科の先輩からの情報も得られない状況の中で、何とかたった一人で対応しなくてはならない状態でした。しかし、そうした背景は全ての在留邦人が理解しており、そんな状況下で、若い医師がなんとか頑張って奮闘しているという事実を認識しており、応援・サポートしてくれていました。
ミャンマーのみならず、その後赴任した全ての国でも在留邦人の皆様の支えがあって、何とか一人前の医師に育ててもらえたのではないかと感謝しています。さらに言えば、何百年も前から、海外で苦労されてきた日本人先達の外国での貢献が、日本人に対する信頼につながっているものと感じていました。在外にいて日本人であるということでないがしろにされたり軽蔑されたりすることは一度も経験していません。
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