人生100年時代の目線 その4 介護保険4半世紀、新たなビジネスモデルの構築
Japan In-depth / 2024年4月15日 16時51分
渋川智明(東北公益文科大学名誉教授)
渋川智明の「タイブレーク社会を生きる」
【まとめ】
・4月から訪問介護の「身体介護」、「生活援助」等の介護報酬が減額、「訪問介護」の倒産は最多更新。
・在宅重視の原点を思い起こし、草の根介護を枯らせずに灯を守りたい。
・地域包括ケアシステム理念の明確化と、施設・在宅介護の有機的連携や適正配分、国や自治体の政策的制度支援が必要。
■ 介護報酬1.59%アップも、身体介護や生活援助報酬は減額
2000年4月にスタートした公的介護保険は、来年度にはや4半世紀を迎える。安定的な制度の確立と、利用者のニーズに応える新たなビジネスモデルの構築が急務だ。
3年ごとの制度見直しで今年4月からサービス提供事業者に支払われる介護報酬が改定され、コロナ禍の福祉職員の離職・人手不足や経費の高騰に対応して処遇改善を目標に1.59%アップした。しかし特別養護老人ホームなど施設系の基本報酬は上がった一方で、ホームヘルパーが要介護認定者の自宅を訪問して介護ケアをする訪問介護の「身体介護」、「生活援助」などの介護報酬は減額されている。
その根拠となったのは厚生労働省の「介護事業経営実態調査」だ。同調査によると、訪問介護系は利益率が7.8%、特養など施設介護系は赤字、事業平均が2.4%で、訪問介護は平均を上回ったことから減額が実施された。
■ 草の根介護グループから反発・反対の声
こうした政策にNPO法人「高齢社会を良くする女性の会」等の多くの団体から、「経営実態が異なる」といった反対意見が相次いでいる。資本力のある事業者が運営するサービス付き高齢者住宅などに併設された訪問介護事業者は一括受注で利益効率が高い一方で、NPO法人や小規模事業者は各家庭が離れていてもヘルパーが一戸ずつ訪問を行っているため利益効率が低いのである。
介護保険の在宅介護は業務形態も幅広く、訪問介護やデイサービスのほか、ボランティア的に家庭料理を弁当にして宅配や配食をするグループも多い。自宅で暮らす高齢者からは「地域の顔を知ったヘルパーなどに気軽にサービスを頼める」と信頼されているものの小規模経営で資金力は乏しい。コロナ禍や経費高、物価高、人手不足による人件費高の問題などが深刻になっているのだ。
介護保険がスタートする前は在宅、施設介護とも社会福祉法人などに事業の参入が規制されていたため、サービス提供事業者が不足していた。介護保険法が策定されると、在宅介護は株式会社やNPO法人など法人格のある指定事業者に新たに参入が認められた。これに応じて地域の主婦ボランティアグループなどがNPO法人を設立して参入し、また株式会社も、新たに起業・創業した小規模事業者が多かった。
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