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折れた絆ー親子の闇

Japan In-depth / 2024年4月21日 17時35分

またDVにさらされている子供の多くに攻撃性、行動障害、衝動性などの外在化行動が増加することも知られている[2]。息子はナースステーションで異常なほど激高していた。経済的困窮も背景にはあったのだろう。介護職の給与は少ない[3]。米国の論文で所得格差、信頼(対人関係)、殺人には相関関係があるとの報告がある[4]。また経済的困窮は社会的孤立を生み出しやすい。社会的孤立が犯罪につながるケースは日本においても昨今事件化されている[5]。





患者の多発ろっ骨骨折も、その背後に隠された苦悩や葛藤を感じさせた。前回入院時の慢性硬膜下血腫もDVが原因かもしれない。





最近、介護職員による高齢者虐待のニュースを目にすることが多い。令和3年の厚生労働省の報告によると、介護施設従事者等による虐待判断件数は739件で、令和2年度の595件から144件(24.2%)も増加している。一概には言えないかもしれないが、高齢者と関わりたくない人が介護職に就くとは考えにくい。労働環境のストレスや経済的困窮とそれらの事件に関連はないだろうか?今回の息子と同様の背景を抱えた職員がいるのかもしれない。





月並みな言い方になるが、今回の事件を通じて、DV被害者へのサポートや発達障害を抱える人々への理解が一層必要であると感じた。もう少し早く徴候に気づくことはできなかったか?後から考えると、入院する度に父親の活気がなくなっていたような気がする。親子の問題に立ち入るのは非常に難しい。医療従事者がどこまで介入するのか議論が分かれるところだろう。





しかし、人の命が失われたのである。介護者の職業も含めた社会的背景を知っておくことの重要性を再認識した。今回の悲劇は、社会的な取り組みなしでは予防できない。でなければ、この親子の終着点はこれしかなかったということになってしまう。父親を乗せた車椅子を操作する息子の姿は、少なくとも自分には「親想い」に映っていた。





1 “The impact of exposure to domestic violence on children and young people: a review of the literature” Child Abuse Negl. 2008 Aug;32(8):797-810.





 doi: 10.1016/j.chiabu.2008.02.004. Epub 2008 Aug 26.





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