政治評論家の屋山太郎氏を悼む
Japan In-depth / 2024年4月25日 18時33分
安倍晋三氏を当フォーラムの最高顧問に迎えることでも、屋山会長の努力は大きかったと思う。
屋山さんはなにしろ安倍家とは晋三氏の父の晋太郎氏の時代からの親交があった。晋三氏の信頼も大だった。そして晋三氏は単に名義だけの最高顧問ではなく、フォーラムの政策形成や調査研究の実態にまで真剣に参画してくれたのだ。暗殺という悲劇までの短期間とはいえ、彼の参画はフルだったといえる。
この二つの出来事が象徴するようにフォーラムはこの数年、世間に広く知られ、その政策や意見の表明は重く受けとめられるようになった。明らかに屋山会長のリーダーシップによる発展だったと思う。
私自身が屋山さんの指導力を直接に実感した具体的な実例では、2019年ごろだったか、日本の政界、官界の一部には中国の習近平国家主席を国賓として招く、あるいは中国側のその要望を受け入れるという動きがあった。当フォーラム会員の大多数は明確に反対だった。屋山さんはその当フォーラム有志を代表する形で当時の安倍首相に申し入れに出かけた。
長野禮子事務局長の事前の周到な準備もあって、首相官邸では当時の総理側近でいまの防衛大臣の木原稔氏が丁重に応じてくれた。フォーラム有志からの習主席招請への反対の書簡を渡し、屋山会長が改めて反対の理由を説明した。私も末席にいて、屋山さんのこうした場でのどっしりとした存在感に改めて畏敬の念を覚えた。
第二には安倍晋三氏が最高顧問に就任したことを記念して、日本戦略研究フォーラムとして屋山会長が改めて安倍氏に日本の安全保障などについての見解を聞くという企画だった。2022年春、安倍氏が暗殺される2ヵ月ほど前、屋山会長が安倍氏と直接に語りあい、その全容を雑誌の「月刊正論」に掲載するという趣旨だった。
ところがその期日の直前になり、屋山さんの病状が悪化してしまった。長時間の語りあいはどうしても無理ということになり、その代役をおこがましくも私が務めることになった。しかし屋山さんは安倍氏にこの点だけは必ず質問してくれと強調して、いくつかのテーマをきちんと私に伝えてきた。だからこの会見はあくまで当フォーラムと安倍晋三元首相との意見の交換だった。そしてその長文の記事は安倍氏の最後の政策表明の集大成ともなった。
屋山太郎さんの当フォーラムでの活動と発信の根源は「よりよい日本」の実現への熱意だったと思う。長年の言論人としての目標も同じだったといえよう。もちろんわが日本をいまよりもよい国に、という表現は曖昧である。だが安全保障に関しては、戦後の日本のアメリカ製押しつけ憲法での自国の防衛への自縄自縛をなくし、世界の他の主権国家と同様の「普通の国」にするという趣旨だろう。屋山さんもそうした主張を年来、表明してきた。
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