国際情勢からの日本の憲法改正の必要性(下)アメリカが切望する日本の改憲
Japan In-depth / 2024年5月1日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・日本は憲法9条により、防衛面でまったくの国際的に孤独な異端者。
・国際秩序を守ろうとする同志諸国との連携が憲法の規制により妨げられる。
・日本が憲法改正して安全保障面で他国との協力を強めることへの国際的な期待はかつてなく大きい。
この状況はまさにロシアや中国が「国際紛争を解決する手段」として軍事力を使っているのである。日本の憲法9条はその無法な軍事力行使に一切、抵抗してはならないと規定しているのだ。
挑戦を受ける側の自由民主主義陣営はこの現在の脅威に対して複数の国家が集団で抑止にあたるという動きを強固に進めるようになった。集団防衛態勢である。
その代表例は北大西洋条約機構(NATO)だといえる。米欧合計31ヵ国が軍事的な集団防衛態勢を築き、加盟の一国に対する軍事攻撃は全体への攻撃とみなし集団で反撃する。集団的自衛権に基づく軍事力行使である。その態勢による戦争や侵略を抑止するのだ。
だが日本は憲法により集団的自衛権を行使できない。軍事力の効用も忌避している。さらに憲法の規定から生まれた自衛隊の海外活動へのがんじがらめの制約、武器の輸出禁止、他国との防衛生産協力、ひいては非核3原則など、他のどの国にもない禁忌だらけなのだ。防衛面でのまったくの国際的に孤独な異端者なのである。
とくに現状はアメリカ主導の既成の国際秩序を守ろうとする側と、その秩序を壊そうとする側との軍事がらみの対決なのだ。日本はもちろん現状維持派である。だがその維持派の他の諸国との連携が憲法の規制により妨げられるのである。
日本は自国の軍事や防衛についてのこの異端な欠陥、そして弱点をアメリカとの同盟への依存で埋めてきた。だがそのアメリカでも年来、この一方的な依存を減らすために日本が憲法を改正することを求める主張が広範なのである。
いま過熱する大統領選挙では直接に日本が争点とはなっていない。だが前々回の2016年の選挙中には共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が「日米同盟ではアメリカは日本が攻撃されれば全力で守るが、日本はアメリカが攻撃されてもなにもしない」として、いまの同盟は不公平だと非難した。日本の憲法の特殊性から生まれる「不公平」を指したわけだ。
日米安保条約に基づく日米同盟はアメリカが結ぶ多数の同盟のなかでも、唯一、片務性が突出した事例なのである。この条約ではアメリカ艦艇などが日本周辺で第三国に攻撃されても、その場所が日本の領海あるいは領土でなければ、日本には共同防衛の義務はない。日本の領海の1キロ外でも日本はトランプ氏の指摘したように、なにもしなくてもよいのだ。
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