アメリカにとっての中国の脅威とは
Japan In-depth / 2024年5月9日 14時23分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米の対中政成形成の中核に立つのは下院の中国特別委員会。
・TikTokの米国内での使用を禁止する法案を議会で成立させたのも同委員会の動き。
・ムーンレナー新委員長が4月末、どのような基本政策で中国に対峙していくかの方針を発表。
アメリカの中国への姿勢を知るには、まず連邦議会の動きを知ることが肝要である。バイデン政権の政策よりも連邦議会上下両院の動きのほうがアメリカ全体の傾向をより率直に示しているからだ。その連邦議会全体でも対中政成形成の中核に立つのは下院の中国特別委員会である。
この特別委員会は公式には「アメリカと中国共産党との戦略的競合特別委員会」という名称である。この名称はアメリカが警戒するのはあくまで中国共産党であり、中国の国民ではない、という意味をこめている。だが一般には長すぎる名称なので「中国特別委員会」と呼ばれる。
その特別委員会が2023年1月に発足した際、当時の下院議長のケビン・マッカーシー議員はその創設の意味について以下の声明を発表した。
「アメリカは中国共産党との冷戦に勝つためには中国の侵略に強固な政策で応じねばならない。その対応はアメリカ経済の強化、サプライ(供給)チェーンの再建、人権問題での発言、そして軍事力の増強などが中心となる。アメリカ国内での中国側の攪乱工作への対処も欠かせない。議会がこれら諸課題に取り組むには多様な委員会にかかわるため、その統括を果たす特別な委員会が必要となった」
この委員会は発足以来、2024年5月までの1年4ヵ月、議会全体でももっとも活発な動きをみせてきた。中国の動向で米側にとって注意すべき点があれば、すぐにそれを指摘して、アメリカ議会としての対応を考える。実際に米側が対応すべき中国の動向が明白ならば、議会での法案や決議案にして立法措置をとる。中国の動画投稿アプリのTikTokのアメリカ国内での使用を禁止する法案をアメリカ議会で成立させたのも、この中国特別委員会が先頭に立っての動きだった。
この特別委員会はマイク・ギャラガーという活力にあふれた若手議員が委員長だった。40歳と年齢は若くても、当選歴4回、海兵隊の軍務歴7年、国際関係の博士号保持という組み合わせで、中国側の無法無謀な行動の抑止に積極果敢にあたった。
ところがこのギャラガー議員がこの4月に議員を辞職した。家庭の事情が最大の理由とされたが、真相は不確実である。上院議員を目指すという情報もある。このため下院では共和党首脳陣の意向でこの中国特別委員会の委員長にジョン・ムーンレナー議員が任命された。
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