〝法の範囲内〟であるはずが「法の強化」招く 波紋大きいつばさの党の選挙妨害事件
Japan In-depth / 2024年5月17日 11時0分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・衆院東京15区補欠選挙の期間中、政治団体「つばさの党」幹部らが他候補の街頭演説を妨害した事件。警視庁が強制捜査に乗りだした。
・他候補に接近、大声で罵倒、選挙カーを追跡するなど、有権者が候補者の政策や主張に耳を傾けることを困難にした。
・今回の問題を機に公選法改正の議論が始まる。「法の範囲内」というつばさの党の行動が逆に、「法の強化」という皮肉な結果を招く可能性がある。
■ 小池知事「身の危険感じた」
警視庁が「つばさの党」本部(東京・千代田区)など関係先3か所を家宅捜索したのは5月13日。容疑は公職選挙法違反(自由妨害)だった。
つばさの党は4月28日に投開票が行われた衆院東京15区補選に候補者を擁立したが、自陣営候補や幹部らが、演説中の他候補に詰め寄って大声で罵倒、クラクションを鳴らし続けたり、選挙カーを執拗に追跡したりするなど、妨害というより恫喝ともいえる行為を繰り返した。
標的にされた陣営は、街頭演説の公開中止を余儀なくされ、被害届けも出した。
自らの支持候補の応援演説をしたことから、自宅まで押しかけられた小池百合子知事は「身の危険を感じた」と、強く非難している。
小競り合いもあったようだが、警備の警察官による注意などによってか不測の事態は避けられた。
今回、警視庁は選挙期間中につばさの党に公選法に基づいた警告を行ったが、家宅捜索が行われた5月13日は、4月28日の投票から2週以上が過ぎていた。妨害を受けた他陣営からは、「選挙後になって取り締まるなら、やったもの勝ちだ」(14日づけ、朝日新聞)と不満を鳴らす指摘もある。
しかし、ことは選挙、言論の自由に関連するだけに警察当局も慎重にならざるを得なかったようだ。
「選挙の自由妨害」の取り締まりで、結果的に「選挙の自由」を侵すことになってしまいかねないからで、期間間中に行った公選法に基づく警告が精いっぱいだったのだろう。
札幌で2019年、安倍首相(当時)の選挙応援演説中にヤジを飛ばして警察官から排除された市民による国家賠償訴訟で、一部について、排除が違法と判断されたことも影響していた可能性がある。
■ 慎重な警備の会場で過去に党首刺殺事件も
選挙・演説での警備の難しさで思い起こすのは、古い話だが、安保改定騒動直後の1960(昭和35)年10月に日比谷公会堂で開かれた3党首演説会だ。
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