新聞各紙 残念な防衛関連の未検証記事
Japan In-depth / 2024年5月27日 23時0分
この記事は「会員限定」のバリューある記事で、【イブニングスクープ】、つまりスクープだと謳っている。しかも記者の署名記事ですらない。
財務省は本年度予算で初度費は認めたものの、日本製鋼所によるライセンス生産に難色を示している。このため日本製鋼所が「ライセンス生産」を行う可能性は現時点ではありえない。
以下は私が今年4月に書いた記事だ。
(2024年度予算)今回、国産化のため初度費158億円が上記とは別に計上されているが、今年度は国産化は見送られる可能性が大きい。これは財務省が難色を示しているからだ。それは生産を担当する日本製鋼所がコマツの社員やベンダーを利用するつもりだが、装甲車両の製造経験がなく、三菱重工などの既存の装甲車メーカーに比べて初期費用が莫大になる可能性があることや、コマツが撤退して三菱重工、日立の2社体制の装甲車メーカーが再び3社になって調達性が低下し、高コスト化することを心配しているからだ。
財務省は日本製鋼所以外の装甲車メーカーによる国内生産、あるいは輸入を求めており、それが決まらない場合、本年度の初度費は輸入調達に振り向けていいとしている。現段階では結論が出ておらず、財務省、防衛省のより高いレベルでの調整が行われている。
(参考:「陸自装甲車両調達の最新情報 24年度防衛予算」
https://japan-indepth.jp/?p=82517)
手前味噌ながら、こういう記事こそスクープという。日本製鋼所が行うのは昨年度同様に輸入された装甲車AMV XPに自衛隊仕様の無線機やウィンカーを取り付ける程度の話だ。
再び、日経の記事に戻る。
今後10年ほどは毎年度、同程度の規模の受注が見込めるとみている。開発元のフィンランド企業の協力を得て室蘭製作所(北海道室蘭市)で生産する。
無線機取り付け程度を「生産」というのであれば、今後10年は輸入品が調達され、ライセンス生産は行われないことになる。またこの記事では「開発元のフィンランド企業」と述べてパトリアという社名すら述べていない。この点で既に経済紙以前に新聞記事としては失格レベルだ。
上記のことは防衛装備庁、陸幕、日本製鋼所、パトリア及びその代理店に取材すれば教えてくれるはずだ。記者は一体誰に何を取材して記事を書いたのか。
仮に取材先に特定の思惑があり意図的な世論誘導を目指して記事を書かせようとしても、基礎知識があり、複数のソースから裏とりすればこういう記事にはならない。
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