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宗教教育と言語について(上)   イスラム圏の教育事情 その4

Japan In-depth / 2024年5月31日 17時0分

宗教教育と言語について(上)   イスラム圏の教育事情 その4


林信吾(作家・ジャーナリスト)


林信吾の「西方見聞録」


【まとめ】


・イランは、1979年に革命によって王制は打倒され、国号は「イスラム共和国」、国名はイランとすると決定した。


・イランと言えばロシア(=プーチン政権)の数少ない同盟国。


・中東諸国のイスラム過激派を支援して、米国やイスラエルと激しく対立している。


日本では長きにわたって、


「預言者ムハンマドはコーランを翻訳することを禁じた」


と言い伝えられてきた。したがって、イスラムの宗教行事ではアラビア語だけが用いられている、と。


 


 だが、考えてみれば、イスラムはアラビア語圏の地域宗教ではなく、アジアからアフリカにまで広まった世界宗教であり、信者の母国語も多岐にわたっている。そもそも岩波文庫に『コーラン』の日本語訳(井筒俊彦・訳。上中下3巻)があるのは一体どういうことか。


 


 実はこれ、翻訳と一口に言っても、その意味するところは様々である、という話なのだ。


 


 イスラムの歴史は、西暦610年、預言者ムハンマドが神の言葉を聞いたことから始まる。ちなみに、イスラムという単語自体が「教義」といったほどの意味なので、私は「イスラム教」と表記しない(二重形容になるので)。コーランも日本では「啓典の書」などと訳されたりもするが、要は「読むべき本」といった意味であるらしい。


 


 日本ではまた「クアラーン」「クルアーン」といった表記も広まりつつあるようだが、本連載では伝統的な表記法に倣って「コーラン」で統一させていただく。


 


 一方、預言者ムハンマドについては、日本では長きにわたって「モハメット」が定着していたが、こちらはより原音に近い表記を採用した。


 


 表記揺れではないか、と言われても仕方ないが、もともと外国の地名や人名をカタカナ表記するに際しては、書き手の判断と責任において個別具体的な基準を設定する他はない。日本語の便利なところでもあり、厄介なところでもある。


 


 話を戻して、コーランは預言者ムハンマドが神の啓示を受け、その言葉を書きとどめた一冊であるから、翻訳という概念自体、本来は成立しない。ただ、布教の過程で、コーランに書かれているのはこういうことです、という「解説書」「副読本」のようなものが、各国語で出版されてきた。これが日本では、翻訳と銘打って売られてきただけの話なのだ。


 


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