沖縄県議選、「オール沖縄」は生き残れるか
Japan In-depth / 2024年6月12日 14時0分
同知事の人事政策にも確固たる方針が見られず、有能な県の幹部職員を更迭するなど、迷走気味であった。政策理念が明確でないままパフォーマンスに走る、玉城氏に対する県職員の視線は冷ややかだ。県職員の士気は低下し、県庁職員の数々の不祥事が発覚し、早期退職も続出した。
▲写真 沖縄県庁舎(2022年9月12日)筆者撮影
辺野古埋め立てをめぐる裁判闘争では、本年(2024年3月)最高裁で県敗訴が確定したが、玉城知事はその結果に従わなかった。県職員は法制度に従って働くことを基本とするので、知事の行動は県職員を当惑させる。また、本年(2024年)5月24日に知事が発表した中学給食無償化の方針も、物議をかもした。
この件は、沖縄県内の市町村が中学生の給食の半額を負担する場合は、残りの半額を県が負担する、というものだ。この政策に対し、保守系の11市長が猛烈に反発した。その理由は、市町村への事前の協議が一切なかったことに加え、財政力が乏しく給食費の半額を負担できない市町村は県の支援が受けられず、結果として保護者が負担することになることだ。市長だけでなく、町村長からも苦言が出た。
知事の「唐突な」発表の裏には、共産党の動きがあったという。「オール沖縄」からは、一歩前進と評価する声もあるが、立憲民主党や社民党、社会大衆党は、組織的に賛意を公表していない。だが、日本共産党沖縄県委員会のHPや「しんぶん赤旗電子版」は、この問題をトップニュースとして扱い、「共産党県議団の提案が実る」や「共産党繰り返し要望」などと、知事に対して共産党が強く働きかけ、それが実現したことを誇らしげに述べている。
問題は、知事が給食費無償化を政治的な争点にしたことだ。地元紙『琉球新報』は、知事は選挙応援に駆け付けるたびに「『県議会で野党が議席多数を取れば、必ず自民党はこの計画をつぶしにかかる』とまで語」ったとし、県政野党(保守、中立など)への「対決姿勢を鮮明にしている」と批判的なトーンで述べた(6月6日同紙電信版)。
この知事の提言を実現するには、2025年度予算案が県議会で可決されなければならず、県議会議員選挙で「オール沖縄」が勝つことが前提となる。だが、都市部に比して一部の町村は財政的な余裕がなく、知事案は都市部に偏った政策になっている。今回の県議選では、共産党の候補者7人がいずれも都市部から立候補しており、同党を後押しする「選挙対策」との批判が保守系などから出たのは無理もない。厳しい指摘を受けて知事はこの案を修正せざるを得なくなった。
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