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英国で政権交代が起きた理由(下) 「選挙の夏」も多種多様 その2

Japan In-depth / 2024年7月17日 11時0分

英国で政権交代が起きた理由(下) 「選挙の夏」も多種多様 その2


林信吾(作家・ジャーナリスト)


林信吾の「西方見聞録」


【まとめ】


・英国の単純小選挙区制では、当選者は選挙区ごとに最多得票した一名のみで、他の者は、たとえ1票及ばなくても落選してしまう。


・英国の総選挙は得票率と議席数がまるで一致せず、小政党に極めて不利だという問題がある。


・英国の総選挙、とりわけTVなどマスメディアの時代となってからは、党首のキャラクターやカリスマ性が結果に大きく影響する。


 


 日本も英国も、小選挙区制を採用している国である。


 ただ、比例代表制と併用され、選挙区で落選しても、得票率によっては比例で復活できる日本とは違い、英国の単純小選挙区制では、当選者は選挙区ごとに最多得票した一名のみで、他の者は、たとえ1票及ばなくても落選してしまう。今次の総選挙で、トラス元首相ら労働党の大物議員が相次いで落選したことは、前回お伝えした。


 ここにはふたつの大きな問題があると、英国では前々から言われている。


 ひとつは、得票率と議席数がまるで一致しない、ということ。


 労働党が、歴史的大敗と称された前回から、211議席も増やして圧勝したわけだが、得票率は33.7%に過ぎなかったことも、やはりお伝えした。


 一方、EUからの離脱支持や移民に対する規制強化を訴えたナショナリスト政党のリフォームUKは、14.3%と堂々3位の得票率でありながら、5議席を獲得したにとどまっている。


 かつては、第三極と称された地涌民主党が、幾度もこうした憂き目を見ていた。もともとこの党は教育程度の高い中間層の支持者が多いとされ、その分、特定の選挙区を地盤とすることができなかったのだ。


 しかし今次は、過去の経験に学んだのか、イングランド南部・南西部という、保守党の地盤であった選挙区に注力し、保守党政権に対する批判票の受け皿となった。結果、12.2%(前回比+4.1ポイント)でもって71議席を獲得。実に63議席増である。


 ふたつ目の問題とは、この結果からもお分かりのように、小政党に極めて不利だということ。ただしこれは全国レベルでの話で、今もイングランドとの間で政治的な火種がくすぶっている北アイルランドにおいては、かつて激しいテロ活動を繰り広げたIRA(アイルランド共和国軍)の政治部門であるシン・フェイン(ゲール語で〈我ら自身〉の意味)党が、今次も7議席を維持した。これは保守党あるいは労働党への批判票と言うより、未だ南北アイルランドの統一を認めないロンドンの政府に対する「不信任票」と見るのが正しいのかも知れない。


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