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公開情報を納税者に隠す防衛省のインテリジェンスの欠如

Japan In-depth / 2024年7月19日 1時9分

 あらゆる常識、特に不都合を隠蔽しておき、芸能人らを使って自衛隊のアピールしたい空虚なプロパガンダ、「無敵皇軍」的なイメージ宣伝だけしておけばいい、というのはかつての帝国陸海軍と同じである。その帝国陸海軍は国民や議会に説明責任を果たすことなく、肥大化して挙げ句に無謀な戦争を起こして、自滅的に敗北した。


 国民、納税者を軍事的に盲目にしておけば批判を避けられる。エビデンスに基づく防衛省や自衛隊の監視や批判が少なければ、批判は情緒的になりやすいので、防衛議論は神学論争になりがちだ。そのような批判であれば等閑視できる。


 逆に外部から不都合な事実を突きつけられれば、それを認めて改善せざるを得ない。それを防衛省や自衛隊は死ぬほど嫌っている。組織防衛のために防衛省や自衛隊は決して間違いを犯さないという建前を押し通そうとする唯我独尊的な組織文化となっている。また同様に組織内で批判や改革の声を上げるものも「異端」として弾圧する。


 秘密主義で内外からの批判を避け、批判を組織に対する攻撃や弾圧だと被害者ぶるので事実を直視せず、悪いのは外部だ、マスメディアだ、政治家だと他人のせいにする。防衛省や自衛隊は他責思考の文化に支配されている。


 だから組織に問題があっても、認めようとしない。現状を憂う内部の人間も「組織防衛の敵」と認識していじめたり、追い出したりする。だからますます外部の常識から外れていく。それがパワハラやセクハラの温床になっている。そのような人物が組織から排除される、あるいは発言をしなくなるので独善的な組織文化が益々強くなる。筆者が指摘した陸自の衛生キットに関する批判がその好例だ。


 当時陸自の個人衛生は止血帯、包帯各一個だけだった。対して米陸軍のキットは22個の構成品から成っていた。だが防衛省は「『個人携行救急品』の内容は、米軍等の装備も参考に定めており、米陸軍の同装備と概ね同様の内容品であり、著しく劣っているとの指摘には当たらないと認識している」と述べて、会見で岩田陸幕長や中谷防衛大臣の答弁もそれに沿ったものだった。


 だが筆者の質問や記事で事実を突きつけことがきっかけとなり、防衛省の衛生のあり方検討会の座長である佐々木広尾病院長(当時)も、同様の批判を「月刊WILL」などで展開、さらに大野元裕参議院議員(現埼玉県知事)らが動いて補正予算が組まれて、個人衛生品の改善がなされた。防衛省のいう「米陸軍同等で問題ない」ならば改善の必要はなかった。


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