トランプ狙撃事件をどう読むか 2つの教示
Japan In-depth / 2024年7月23日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・トランプ氏の暗殺未遂事件は、アメリカ全体を団結させた。
・今回の事件は、民主、共和党の対立をこれ以上険悪化させないという合意を浮上させた。
・トランプ氏の、非常事態において発揮した強靭さ・果敢さは賞賛に値する。
アメリカのドナルド・トランプ前大統領への狙撃事件をどう解釈すればよいのか。その意味するところなんなのか。大統領選挙の真っ最中の前大統領暗殺未遂という出来事は、全世界を震撼させた。凶弾が文字通り、間一髪で標的をかすめたという点だけでも、衝撃的だった。血を流したトランプ氏が右手を振りかざして「闘うぞ」と叫んだ反応も、全世界に強烈なインパクトを与えた。さてこの狙撃事件はいまのアメリカの政治や社会でなにを意味するのか。
アメリカ東部のペンシルベニア州の小さな町バトラー市でのトランプ候補の政治大集会で7月13日午後6時(現地時間)すぎ、8発のライフル弾が発射された。そのうちの1発は会場の壇上で演説を始めたトランプ氏の右耳を貫通した。他の弾丸は近くにいた50歳の元消防士の男性を撃ち、即死させた。他の2人の男性もそれぞれ重傷を負った。
野外の会場は本来、農業産品の展示場だった。銃弾は会場のすぐ外にある倉庫のような建物の屋根から発射された。屋根からトランプ氏が立つ壇上まで直線距離で140メートルほど、ライフルを発射したのはペンシルベニア州内に住む20歳の青年だと判明した。動機や背景はまだわかっていない。
しかし、アメリカ全体としての反応や眼前の大統領選挙への影響などは、かなりの程度読むことができる。事件から1週間が過ぎたこの時点で私自身の長年のアメリカとのかかわりに基づき、いま明確となった事実を考察し、その示唆する方向を追ってみよう。その教示は大きく分けて2つある。
まず第一はアメリカ全体の団結だといえる。
大統領経験者の暗殺企図というこの事件はアメリカ全体を揺らがせるとともに、連帯させた。一定限度を超えた政治的暴力つまりテロを非難する点での超党派の一致である。アメリカの民主主義の根幹での団結だともいえる。
アメリカでは銃器を使っての政治的殺傷は多いが、大統領やその経験者を標的とした事件は意外と少ない。1900年代に入ってからの百数十年のうちにわずか2回、1963年のジョン・ケネディ大統領の暗殺と1981年のロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂だけだった。今回が3回目なのだ。
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