「石丸氏2位」が持つ意味とは(下)「選挙の夏」も多種多様 その4
Japan In-depth / 2024年7月26日 11時0分
そのような彼が、労働党員になった理由からして、当時も今も「ジェントルマンの義務のひとつ」と評される社会奉仕活動を通じて、ロンドンのスラム街の惨状を知ったことであったという。
そのような彼が、どうして労働党のリーダーたり得たのかと言うと、その「ネクラ」な一面がプラスに働いたのだと考える向きが多い。
つまり「俺が、俺が」と前に出て皆を引っ張ってゆくタイプではなく、反対意見も粘り強く聞き、敵を作らないという調整型のリーダーであったのだ。
チャーチルからは「羊の皮をかぶった羊」などと揶揄されたことまであったが、そのように彼を過小評価したことが、総選挙で足をすくわれる遠因となったことも、また事実である。少なくとも英国の政治家やジャーナリストの多数派は、そう考えていた。
そうしたキャラクターであったからこそ、TVの時代では評価されなかったろう、などと言われてしまうわけだが。
あれから四半世紀余り。今やTVの時代も終焉を迎えようとしている。
本誌の読者には、今さらくだくだしい説明は不要であろう、昨今では若年層を中心にTVを持たない人も増える一方で、スマホなどインターネットの端末に取って代わられている。
英国もこの流れと無縁でいられるわけはなく、選挙戦の在り方も大きく変わった。
かつて英国における選挙運動とは、もっぱら戸別訪問であった。単純小選挙区制であるがゆえに、戸別訪問に要する時間とエネルギーも知れたものなので、これまた前にも紹介した、
「有権者と政治家がより密接な関係を持てる」
としてこの制度を擁護する議員が実際にいるのは、具体的にはこのことを指しているのだろう。マスメディアの「出口調査」などより早く確実に、有権者の考えを知ることができるのだ。
一方、日本の選挙につきものの選挙カーや、候補者のポスターを張り出す大きな看掲示板は、まず見かけない。街の景観や、騒音の問題にはことのほかうるさい国なので、今次の都知事選で起きた「掲示板ジャック」のような問題は、最初から起こらないのである。
これも以前に述べたことがあるが、私はロンドンで暮らしていた頃、労働党の前党首であったコービン氏と同じ通りに住んでいた。1987年の総選挙に際しては、氏が自分の車(小型のプジョー)にLabour=労働党と大書したステッカーを貼りつけ、屋根には三角帽子のような飾りまで取りつけて、支持者を投票所まで送迎していたのを、この目で見ているが、これはもちろん、選挙カーとは持つ意味が違う。
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