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福島県立大野病院事件とある医学部生

Japan In-depth / 2024年7月28日 9時31分

ただ、この事件は福島県で起こった。宗像氏は福島県出身だ。地元のことで関心もあったのだろう。彼は「後輩に頼まれた」と、優秀な女性スタッフを紹介してくれた。東大医科研の研究室にきてくれた彼女に、およそ2時間かけて状況を説明した。私の説明を聞いた彼女は「これは医師が可哀想ではなく、この事件をきっかけに産科が崩壊したら、国民が可哀想ですよね。動きます」と言って戻った。


数週間後、彼女から電話があり、「見つけましたよ。放送も決まりました」と連絡があった。4月27日の放送で、この事件が取り上げられ、その中で産科医逮捕をきっかけに、全国の産婦人科医がお産の取り扱いを辞めようとしている現状、およびそのような病院に通院している妊婦の悲痛な声が紹介された。「見つけましたよ」とは、番組で証言してくれる妊婦のことだ。


『とくダネ!』での報道をきっかけに、他局や全国紙も、この問題を扱った。その後の展開は、前述の通りだ。


私は、この経緯を伊谷野さんに話した。そして、『とくダネ!』の意義を説いた。それは、この番組までは、事件は医師に対する不適切な逮捕を医療界が憤るという構造だったのが、これ以降、医療崩壊という国民にとっての問題に論点が転換されたからだ。世論は一気に盛り上がった。


私は、このような世論の転換には、福島という土地の歴史、伝統が大きく貢献したと考えている。彼女に強調したのは、私と宗像さんのご縁だ。私と宗像さんが知りあったのは、大学時代の剣道部で先輩・後輩という間柄だったからだが、これは福島という土地の歴史が影響している。


江戸時代、福島県には会津藩18万石を筆頭に、10の藩が存在した。親藩2藩、譜代7藩、外様1藩という構成だ。幕末、福島県の諸藩は奥羽越列藩同盟に参加し、新政府に敗れる。会津藩を筆頭に冷遇されるが、江戸時代から引き継いだ文武両道の教育は、その後も引き継がれる。その一つが剣道だ。


福島県は剣道が盛んだ。私や宗像さんが東大剣道部在籍中の剣道部師範は、小沼宏至先生だった。小野派一刀流の使い手で、警視庁主席師範を務めた有名人だ。私が、人生で初めてお会いした福島県人だった。


福島県からは、2005年に全日本剣道選手権大会を制した原田悟氏も出ている。原田氏で特記すべきは、県内一の進学校である福島県立福島高校を卒業していることだ。その後、筑波大学に進んだ。


宗像さんも同様だ。福島県立安積高校出身。安積高校は、旧制福島一中を前身とし、福島高校と並ぶ福島県の名門校だ。宗像さんは、高校時代にも剣道部に所属し、インターハイにも出場した。


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