ヘイ、JUDO!今から次の五輪が楽しみ その2
Japan In-depth / 2024年8月9日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・パリ五輪では、柔道を中心にネット世論が沸騰。
・審判の判定や選手の技を巡る議論が多かった。
・柔道は観戦スポーツとして面白さを追求した結果ルールが変化し、今回それが浮き彫りになった。
今や五輪に限った話ではないが、SNSに色々な人が色々なことを投稿して、なにかと物議を醸している。
とりわけ今次のパリ五輪では、柔道をめぐってSNSをはじめネット世論が沸騰した感があった。
まずは女子52㎏以下級で、東京五輪の金メダリストであり、今次も優勝の最有力候補とされていた阿部詩選手が、まさかの2回戦敗退。試合後、コーチの胸に顔を埋めて泣きじゃくる姿が、世界中に中継された。
号泣する姿に同情する声も寄せられたが、同時に「試合の進行を妨げた」「見苦しい」などと、批判的な投稿も少なくなかった。
録画を見たが、彼女が号泣したのは畳を降りてからであり、相手選手と審判への一礼も欠いていないので、見苦しいか否かは感覚の問題であるとして、試合の進行を妨げたというのは「話を盛りすぎている」と思う。本当に試合進行上の問題が起きていたら、主催者側や他国の選手からクレームがあって然るべきだが、そういった話は聞かない。
ただ、私個人としても、少々いただけない、とは思った。
前回も述べたことだが、アスリートではないが武道経験者として言わせてもらえるなら、
「勝ったら派手なガッツポーズ、負けたら号泣」
という競技に臨む姿勢自体、違和感を覚えるのだ。同時に、致し方ない一面もあるのかとも思う。
1980年代の終わり頃、英国ロンドンで現地発行日本語新聞の記者をしていた私は、日本柔道界のレジェンドで後にJOC(日本オリンピック委員会)会長となる山下泰裕氏にインタビューしたことがある。氏は当時、語学留学の傍ら、日本大使館などの後援を得て、各地で英国の青少年を対象とした柔道教室を開催していた。
「イギリスに今後、柔道が普及するとして、それは日本文化がこの国に受け容れられた、ということになるのでしょうか。それとも、この国の人たちは、スポーツとして柔道を楽しむのでしょうか」
という私の質問に対して、氏はちょっと考えた様子だったが、
「……まあ、スポーツ、でしょう。ただ、スポーツとしての柔道を楽しむ過程で、礼儀作法とか、精神文化の面も受け容れてもらえれば、結構なことだと思います」
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