金正恩に衝撃を与えた北朝鮮の大洪水
Japan In-depth / 2024年8月15日 20時0分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・7月末、中朝国境の鴨緑江・豆満江流域を大洪水が襲った。
・軍需工業密集地域が直撃され、金正恩総書記はショック。
・災害の原因は、インフラ投資を行わず核ミサイル開発にうつつを抜かす金正恩の無能さ。
7月末に中朝国境の鴨緑江・豆満江流域を大洪水が襲った。北朝鮮は甚大な被害を被り、住民の不安を高めている。被災地は平屋建ての住宅の屋根の高さまで浸水し、どこに道路があったのかわからない状態となった。橋や道路が流失し、電柱の多くが流され、電力供給は完全に断たれた状態となった。
今回の大洪水で金正恩総書記がショックを受けたのは、大被害による民心の離反もさることながら、何よりも軍需工業密集地域が直撃されたことだった。
■ 深刻な被害状況
朝鮮中央通信は、新義州市などで約4100世帯と農耕地3000町歩(1町は3000坪)、そして建物、道路、鉄路が浸水したと伝えたが、人命被害については報じなかった。
これに対して韓国メディアは、少なくとも1100人が死亡し、4100戸が浸水したと報道したが、水が引き復旧作業が始まる中で明らかになった惨状は、それよりもはるかに深刻なものだった。
韓国政府は当初、全体の犠牲者を1500人ほどと予想していたが、実際はさらに多いことがわかった。犠牲者は「北朝鮮の慈江道など北部地域だけで少なくとも2000-2500人に達すると推定している」「重機で土砂を撤去するたびに遺体が引き続き出て来る状況」と見られるとし、被災者も「江原道元山と慈江道だけで3万人に達する」とした(TV朝鮮『ニュース9』2024年8月12日放送)。
こうした大被害にも関わらず、金正恩は、韓国からの支援だけでなく国際機関の支援やロシアの支援まで拒否した。「自分たちの力で道を切り開く」と述べたが、それは北朝鮮の悲惨な状態を外部に知られる恐怖からだと考えられる。また金正恩は、中国側が救助を申し出たにもかかわらず、鴨緑江下流の中洲(黄金坪、威化島、九里島など)に孤立した住民を救助せず、見殺しにしたという。中国側に救助された住民が脱北するのを恐れたからだ。
■ 民心の離反に慌てふためく金正恩
被害の大きさに慌てた金正恩は、7月28日に急遽列車で、大規模な洪水被害を受けた平安北道新義州市と義州郡の水害現場を視察し、水没した被災地をゴムボートで見て回る「愛民パフォーマンス」を演出した。そして党中央委員会第8期第22回政治局非常拡大会議(29~30日)を開き、洪水の責任をすべて当該幹部に押し付け、道党委員会の責任書記と社会安全相を更迭した。
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