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金正恩に衝撃を与えた北朝鮮の大洪水

Japan In-depth / 2024年8月15日 20時0分

A氏との主なやり取りは次のようなものだ。





― 現在、派遣されている地域は?





慈江道の慈城(チャソン)郡、満浦(マンポ)市、江界(カンゲ)市まで行ったり来たりしつつ作業を行っている。





― 被害状況は?





鴨緑江沿いの家屋はことごとく浸水したと見ていいだろう。住民はすべて避難している。一般住宅、農家、工場もすべて水に浸かり、道路、堤防、橋もほとんどが壊れた。電気や水道の供給など考えられない。慈江道は大型軍需工場が多く集まっている地域だ。軍需工場には電気を優先供給され、24時間稼働をしていたが、今回の水害でこれらも生産を停止した。





― 人的被害は?





生まれて初めて遺体を見た。とても辛く苦しかった。現場では毎日遺体を見る。中には嘔吐する軍人もいた。救助に来たのに毎日遺体収集を行っている。それほど死んだ人が多いということだ。死者、行方不明者の統計は、道・市・郡の非常災害対応組が調査して、毎日中央に報告していと聞いている。





― 慈江道には、将子江(チャンジャガン)工作機械工場、2・8機械総合工場、江界トラクター工場、江界精密機械総合工場など軍需工場が集まっているが、すべてが稼働を停止したのか?





そうだ。満浦市の軍需工場では、地下への坑道まで多くが水に浸かってしまった。軍需品生産に必要な機械や資材もすべて水びたしになった。今回の党中央委員会第8期第22回政治局非常拡大会議(7月29日―30日)で、慈江道委員会の責任書記が解任されたのは、人命を救えなかったというのが理由ではなく、軍需工場まで浸水被害を受けた責任を問われたものだ。





軍需工場の浸水は極めて深刻な状態だ。爆薬の原料は濡れたからといって乾かすわけにもいかず、すべて捨てるしかない。上層部は、民家が浸水したことより、軍需工場が坑道まで水に浸かったことをずっと深刻に捉えている。





以上の対話を見ても、軍事工業地帯の被害状況がいかに深刻かがわかる。





金正恩は、水害地をゴムボートで視察する映像を流し、「人民愛」を見せつけ、責任を幹部に押し付け、幹部の粛清と更迭を行ったが、災害の根本的な原因は、インフラ投資を行わず、核ミサイル開発にうつつを抜かす金正恩の無能さにある。金正恩は、被害住民を尻目に8月5日にもミサイル発射台250台を国境の第1線部隊に引き渡すセレモニーを行い緊張を高めた。





今回の水害が、金正恩が引き起こした人災であるとの認識は、北朝鮮住民の中にも広がりつつある。特に海外に派遣された労働者や外交官はすでにそのことを察知している。





                                  以上





写真:北朝鮮の金正恩総書記(左)とロシアのプーチン大統領(右)が歓迎式に参加する様子(2024年6月19日 平壌)出典:Photo by Contributor/Getty Images




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