日中関係の再考 その7 中国の強大な軍事脅威
Japan In-depth / 2024年8月26日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・日本は憲法9条によりそもそも対外関係においては軍事力を否定
・中国は核兵器の効用を崇高の軍事力として重視している。
・日中の軍事の現実は日本に巨大な脅威がさし迫っていることを示している。
日本と中国との関係でとくに重視せざるをえないのは軍事面での断層である。日中両国の相違を伝えるなかで、両国の軍事面での態勢の巨大な違いを指摘してきた。この違いは断層と呼べるほどのギャップである。それぞれの国が自国の存続や安全を考えるうえで軍事力をどう位置づけるか。この点の日本と中国の違いは天と地ほどなのだ。
日本はそもそも対外関係においては軍事力を否定するといえる。最大の理由は憲法9条だろう。戦争や戦力の保持を明文で禁止しているのだ。だがその禁止を支持してきた日本国民多数の意思があってこそである。憲法はそのうえに前文で日本国の安全保障は自国の防衛努力ではなく、他の諸国民の「公正と信義への信頼」による、と規定している。「平和こそが大切であり、戦争は絶対にいけない」という毎年8月に全国各地で唱えられる標語は現実の意味を考えても、軍事力の否定だといえる。
他方、中国は対外的な国家目標の追求では、軍事力の行使をためらわない。というよりも必要とあれば、軍事力を使うことを国家の当然の責務だともしている。中華人民共和国という国家の本質をみても、毛沢東主席の「政権は銃口から生まれる」という言葉は象徴的である。
中国の現在の習近平政権はとくに軍事力の効用を強調する。2049年までに自国を世界の主導パワーとすることこそ「中国の夢」であり、その主要手段には必ず強固な軍事力が欠かせない、という趣旨は習近平氏自身の言葉で再三、表明されている。
中国はとくに自国の核兵器の効用を崇高の軍事力として重視している。私自身の中国滞在の体験でも、建国50周年の北京での大式典では、人民解放軍の核兵器の開発を担った人々が改めて表彰され、感謝された。核兵器こそが今日の中国の隆盛の基盤だという認知の再確認だった。日本が官民で非核、反核を主張するのとは完全に正反対なのだ。
では日本が実際に中国から軍事攻撃を受けた場合、どうなるのか。尖閣諸島の事例が現実的である。日本側では長年、尖閣周辺海域での中国海軍との戦闘を想定した場合、局地的な戦いではわが自衛隊が優位にあるとされてきた。そのうえに日本側には同盟国のアメリカの海軍、空軍がついている。100%頼ることはできないにしても、米軍が日本を支援する可能性はきわめて高い。だから一定条件下の特定地域での戦闘の場合、確かに中国軍、恐れるにたらず、ともいえるだろう。
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