日中関係の再考 その7 中国の強大な軍事脅威
Japan In-depth / 2024年8月26日 11時0分
だがこの推定も近年では変わってきた。中国側の武装艦艇の性能が格段と高まったのだ。とくに尖閣周辺海域にふだん侵入してくる中国海警の背後に待機している人民解放軍海軍の艦艇の搭載ミサイルが日本の海上自衛隊の艦艇のミサイルよりもずっと射程距離が長く、命中精度も高くなったのだ。このあたりの中国海軍の戦闘能力の増強はアメリカ側の調査でも裏づけられ、公表されている。
中国の軍事力の詳細はやはりアメリカ側の情報が詳しい。その集大成はアメリカ国防総省が毎年、公表する「中国の軍事力報告」である。この報告が指摘する中国軍の最大特徴は多数多様のミサイルである。日中両国間の軍事関係でも、中国の日本に対する切り札となる兵器はやはりこのミサイルなのだ。具体的には中距離ミサイルである。
中国軍のこの中距離ミサイルは飛行距離1000キロから5500キロぐらいまで、弾道ミサイルと、巡航ミサイルの2種類がある。前述のアメリカ国防総省の報告によると、中国は射程1800キロの準中距離弾道ミサイルの主力DF21Cを90基ほど配備し、非核の弾頭を日本国内の要衝に撃ちこめる状態にある。もちろん核弾頭の装備も可能だという。
そのうえに準中距離とされる射程1500キロの巡航ミサイルDH10も総数400基も保有し、そのうちのかなりの基数が日本国内の目標に照準を合わせているとされる。
これらの弾道、巡航両ミサイルは台湾有事には日本国内の嘉手納、横田、三沢などの米空軍基地を攻撃する任務をも与えられている、ということである。
一方、日本側には中国に届くミサイルは現時点では一基もない。憲法の規定により他国の領土に届く武器兵器は保有できない、という基本を保ってきたからだ。その状態は岸田政権に入っての防衛3文書の採用で「反撃能力」の保有が認められて、変わりはした。この数年のうちに日本側も中国や北朝鮮という自国に明らかな軍事脅威を与えている相手国領土の攻撃兵器を破壊できるミサイル類を保持する、ということになったのだ。だが2024年の現時点ではまだ実際には保有していない。
しかし中国側に多数のミサイルが配備され、その照準が日本国内に合わされているといっても、実際にそれが発射されるわけではない。ただ最悪の事態には、中国側にはそれらを発射する能力があるということである。そんな発射をすれば、当然、日本の同盟相手のアメリカから同様のミサイル攻撃による報復を受けることになる。だからこそそんな攻撃はしないということになる。これが日米同盟による抑止の機能である。だが最悪の事態にアメリカが自国が攻撃を受けていなくても、日本のために中国との全面戦争を覚悟して、中国へのミサイル攻撃を断行するか。この点に疑問がつきまとうことも否定できない。
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