政治利用はこれを最後に!今から次の五輪が楽しみ 最終回
Japan In-depth / 2024年8月29日 7時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・パリ五輪では、SDGsを掲げた選手村の設計や食事が批判され、エアコンの未設置や水質問題がアスリートに影響を与えた。
・理念の過度な追求が選手の健康や快適さを損なう結果となった。
・次回の五輪では「選手ファースト」の理念が望まれる。
今次のパリ五輪では、判定や運営をめぐる炎上騒ぎが相次いだが、場外乱闘とでも言うべきか、わが国では「フワちゃん騒動」というのもあった。
今年の『24時間TV』でチャリーティー・マラソンのランナーを務めることになっている、やす子という芸人さん(ちなみに即応予備自衛官)が、
「オリンピック 生きてるだけで偉いので皆優勝でーす」
と投稿した。これに対してタレント兼YouTubeのフワちゃんが上記の投稿を引用して、
「お前は偉くないから予選敗退」「早く死んでくださーい」
などとサイトで暴言を吐き、大炎上した。すでに投稿は削除され、当人に直接謝罪したらしいが、芸能活動休止の沙汰となっている。
もともと「タメ口キャラ」で売っていた人で、メディアを通じてしか言動を知らないながら、どうも「個性的」と「非常識」の区別がついていないのではないか、といった程度にしか思っていなかった。したがって炎上騒動自体は、今さらどうでもよい。
むしろ気になったのは、やす子がパリ五輪に出場したアスリートたちを指して、
「生きてるだけで偉い」
と評した理由である。機会があれば当人に訊ねてみたいところだが、やはり酷暑の中での競技とか、セーヌ川の水質汚染報道などを念頭に置いての発信なのか。
本連載でも数次にわたって指摘してきたことだが、今や五輪は巨額の放映権料が発生するイベントと化しており、他に大きなスポーツ・イベントがない(したがって放映権料を高く売れる)盛夏の時期に開催されるのが慣例のようになっている。
それは東京五輪も同じであったが、今次のパリ五輪の場合、
「SDGs(持続可能な開発目標)を実践する大会にする」
と標榜し、色々と「斬新な」ことをやってくれた。
たとえば、選手村も既存の建物を利用し、大会終了後はオフィスやアパートにするとしていたのだが、地球環境に優しくないとして、部屋にエアコンが設置されていなかった。
パリ市は北緯48度。北海道の稚内よりもやや北に位置していて湿度も低く、夏でも比較的過ごしやすいとされてきた。実際問題として、エアコンを備えている住宅などさほど多くなかったと聞く。
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