政治利用はこれを最後に!今から次の五輪が楽しみ 最終回
Japan In-depth / 2024年8月29日 7時0分
2014年、パリ市長選挙に立候補し、保守派が推す女性候補を決選投票の末に破り、女性として初めて市長の座に就いた。
経歴だけで人となりまで決めつけるのはよろしくないが、基本的に「親の代からの左翼」で、単に環境問題に関心が深いというあたりを越えて、いささかエキセントリックな政策理念の持ち主であることは、どうやら間違いなさそうだ。
五輪開幕を間近に控えた7月19日、彼女はセーヌ川で泳いだ。本当はマクロン大統領も泳ぐ予定であったと聞く。
もともとこの川は、水が汚いことで有名で、基準値をはるかに越える大腸菌が生息しているとして、実に1世紀の長きにわたって遊泳禁止となっていた。
その川で市長自ら泳いで見せたのは、やはりSPGsの理念のためで、川の水を浄化し、飲料水を確保したり、かつては名産だったセーヌ川のナマズを呼び戻す、というプロジェクトをアピールするためであったという。
実際そのプロジェクトには14億ユーロ(約2400億円)という巨額の公的資金が投じられた。市民は物価高に苦しんでいるのに、という批判の声も少なくなかったが、市長のパフォーマンスは、そうした声に対する「反論」でもあったようだ。
それだけにとどまらず、五輪の開会式では各国の選手団が船でセーヌ川を下ってくる、という、一風変わった演出で入場行進が行われ、さらにはトライアスロン(水泳1500m、自転車40㎞、持久走10㎞)の水泳会場にセーヌ川が選ばれた。
水が完全に浄化された後ならば、なにも問題はなかっただろうが、実際にはそうではなく、水質との因果関係について詳細までは不明ながら、複数の選手が体調不良を訴える始末で、これまた各国から非難囂々であったことは記憶に新しい。
セーヌ川の水質浄化プロジェクトも、さらに言えば「SDGs五輪」という理念も、決して間違ったものではなかっただろうと私は考える。
しかしながら、未完のプロジェクトの宣伝や、度の過ぎた理念へのこだわりのために、選手たちの健康までもないがしろにするなどとは、一体誰が認められるだろうか。
次こそは「選手ファースト」の理念に基づいた五輪を開催してほしいものだ。
(その1、その2、その3、その4)
トップ写真: トーマス・バッハIOC会長がフランス・パリで開催される2024年パリオリンピックの開幕を前に、オリンピック村を視察しながらサラダバーの料理を試食する様子(2024年7月22日)出典:Photo by David Goldman - Pool/Getty Images
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