米大統領選 世論調査の信頼度とは
Japan In-depth / 2024年9月16日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米大統領選、ハリス候補の世論調査での支持率は、あまりに急速で大幅に上昇。
・世論調査が大きく間違ったという事態が過去2回の選挙で続いた。
・世論調査が果たして現実を正確に伝えているのかどうか、疑問の余地を認識しておくことも必要。
アメリカの大統領選挙も投票日まで50日ほどに迫った。勝者は民主党のカマラ・ハリス候補か、共和党のドナルド・トランプ候補か。その結果によって超大国アメリカの政治は大きく変わる。同時に世界への影響の変化も巨大となる。その両候補の支持率はいまや僅差とされる。大接戦の展開というわけだ。
だがこの戦いの現状や展望を占う根拠は米側の多数の機関が実施する世論調査の結果である。
全米の有権者を対象とする世論調査でハリス、トランプ両候補への支持率を探る。その公表される結果が本番選挙の帰趨を占う指針となるわけだ。だがこの世論調査は実際にどれほど正確なのか。この疑問はすでにアメリカの一部の識者の間で提起されている。なぜなら大統領選挙前の世論調査が実際の結果とは大きく異なった前例、つまり世論調査が大きく間違ったという事態が過去2回の選挙で続いたからだ。2016年と2020年の選挙だった。
この歴史の教訓は今回の選挙の読み方でも考慮されるべきだろう。だが日本側の米大統領選報道ではこの世論調査への疑問はまず提起されることはない。なぜその提起が必要なのか。その理由を説明しよう。
今回の大統領選でのミステリーの一つはハリス候補の世論調査での支持率のあまりに急速で、あまりに大幅な上昇だといえる。ハリス副大統領がバイデン大統領の撤退の後を継いで民主党の新たな候補になると決まったのが7月21日、そして民主党全国大会でのハリス氏の正式指名が決まったのが8月21日、この期間とその後の2週間ほどを含めての6週間のハリス氏の人気の急上昇はものすごかった。
トランプ候補はバイデン大統領との1対1との対決では常に優位に立ってきた。どの世論調査をみても数ポイントの僅差とはいえ支持率では先行していた。とくにウィスコンシン、ペンシルベニアなどの激戦州7州ではトランプ氏の優位が確実だった。ところがバイデン氏が明らかな認知能力の衰えのために選挙戦から撤退して、ハリス氏が予備選での競争を経ないまま後継の候補となると、すぐにトランプ氏の支持率に追いつき、一部の調査、一部の州では優位に立つようになった。その差は「カミソリの刃」と評されるほどの僅差だったが、ハリス氏の勢いは顕著となった。
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