米大統領選 世論調査の信頼度とは
Japan In-depth / 2024年9月16日 11時0分
世論調査へのこの種の不信には実は党派性を越えた有力な根拠がある。過去2回の大統領選で調査全体が大きな錯誤を冒したからだ。2016年のトランプ対クリントンの戦いでは直前まで約50の世論調査がみなクリントン候補の数ポイントから10ポイント以上の優位を発表していた。ほぼ唯一、ラスムセン社だけが同率としていた。
2020年の選挙では民主党のバイデン候補がトランプ候補とは史上稀なほどの僅差で勝利した。だがほぼすべての世論調査はバイデン氏への有権者の支持がはるかに高いとして、同氏の圧勝の予測を打ち出していた。「巨大な青い波が全米を覆う」という予測だった。「青」は民主党のカラーである。議会選挙では下院が逆に共和党の赤い波に押し流され、民主党は少数派へと転落した。
この展開に対し民主党寄りの政治専門紙「ヒル」は「今回の選挙での最大の敗者は世論調査機関だ」と論評した。
同じ民主党寄りの総合雑誌「アトランティック」は「世論調査の大失態はアメリカ民主主義の危機だ」とまで批判した。そのうえでニューヨーク・タイムズ系、エコノミスト誌系などの世論調査結果を「最悪の錯誤」とまで断じていた。
最近のアメリカでの世論調査の方法は直接の電話、対面の質問、ネットでの交信などの混合だという。だがなお多い電話では保守系の人はメディア母体の調査機関の質問に応じる度合いがリベラル系の人にくらべると低いとされる。さらに共和党側では世論調査機関の多くは民主党傾斜の大手ディアと一体になったところが多く、調査対象の重点を最初から民主党支持層が多いことが明白な都市部におくなどの作為がある、とも批判する。
このあたりの調査機関の政治偏向は証明が難しい。だが、いま連日のように発表される各種の世論調査の数字が果たして現実を正確に伝えているのかどうか、疑問の余地を認識しておくことも必要だろう。なにしろ過去2回の大統領選挙では世論調査は明らかに大きなミスを冒したのだから、今回も同様の現象が起きないという保証もないのである。
トップ写真:トランプ候補とハリス候補のテレビ討論をモニターで移すバー(2024年9月10日アメリカ・ニューヨーク)出典:Robert Nickelsberg/Getty Images
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