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「濃縮ウラン製造施設」を初公開した金正恩の狙い

Japan In-depth / 2024年9月18日 11時0分

そして、2003年8月から中国を議長国とした米・韓・日・ロ、朝による北朝鮮非核化のための「6カ国協議」が始まった。


この交渉も北朝鮮が2006年10月に初の核実験を行い、交渉継続の条件として国連安保理制裁と米国独自の金融制裁解除を迫ったことから難航した。2007年1月のクリストファー・ヒル国務次官補と金桂寛外務次官の会談(ベルリン)で、米国が一定の譲歩を行ったことで交渉は再度進展するかに見えたが、結局、第6回「6カ国協議」を最後に挫折を余儀なくされた。北朝鮮非核化のための「6カ国協議」は、北朝鮮に核開発の時間を与え、交渉のための対価物まで食い逃げされる結果をもたらしただけだった。


その後北朝鮮は、対米圧力を強めるため、2010年に米国の核物理学者シグフリード・ヘッカー博士を寧辺に招待して秘密裏に進めてきた「濃縮ウラン製造施設」を初めて見せつけた。ヘッカー博士は、ウラン濃縮用の遠心分離機が2000基ほどあり驚いたとしていたが、今回報道された写真を見ると、その数は何倍にもなっている様子だ。


*遠心分離機は、核開発の過程でウラン核燃料生産に重要な役割を果たす装備。通常、2千台の遠心分離機で年間約40キロのHEU(高濃縮ウラン)を生産できる。それを考慮すると、毎年200~240キロのHEUを確保できることになる。核弾頭1発を作るのにHEUが約25キロ必要なため、北朝鮮はHEUだけで毎年8~10発の核弾頭を生産できることになる。韓国政府消息筋は、「北朝鮮が秘密のウラン濃縮施設を1、2つ以上運営している可能性もある」とし、「その場合、核弾頭生産量がさらに増える可能性がある」と指摘した。


 


■ 濃縮ウラン製造施設初公開の狙い


では、金正恩が秘密にしていた「濃縮ウラン製造施設」を全世界に公開した狙いはどこにあるのか?


その狙いはまず、金正恩の力の誇示と権威維持にあると見られる。


北朝鮮の「首領独裁体制」は首領の権威と統率力が生命線である。その弱体化は即体制の崩壊につながる。金正恩の権威は破綻した経済では維持できない。頼るのはただ一つ核武力誇示による国威発揚だ。金正恩は「濃縮ウラン製造施設」視察で「見るだけで力が出る」と言ったというが、この言葉が彼の考えを端的に示している。


ところが、金正恩に対する北朝鮮住民の崇拝度はこのところ低下の傾向が続いている。特に若者層の金正恩離れは顕著だ。最近韓国に亡命した北朝鮮のエリートたちは、口を揃えてこの点を指摘している。「濃縮ウラン製造施設」を見せれば、住民が「すごい」と驚き権威回復につながると考えたのだろう。


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