軍オタが歪める防衛議論(後編)
Japan In-depth / 2024年9月22日 19時0分
同年のパリの軍事見本市であるユーロサトリには陸上担当の開発官の川合正俊陸将(当時)と一佐の二名(通訳を同行)が訪れたが、同陸将はその後一ヶ月ほどで退官して防衛とはまったく関係ない企業に再就職している。ただでさえ少ない視察予算が高官の「卒業旅行」に利用されているのだ。防衛省にとって海外視察は退職前のご褒美の物見遊山でしかない、ということだ。つまり海外視察を情報収集の手段ではなく、ご褒美の娯楽だと考えていた。
この件は筆者が何度も報じたために、現在では当時に比べて出張は増えている。財務省も積極的に予算をつけているが、当の防衛省が海外視察を歓迎しておらず。できるだけ出さないようにしいる。そして、担当者には説得のために財務省が認めないと財務省を悪者にして出張させないケースも多い。これではまともな情報収集が出来るはずがない。それは開発もまともにできないということだ。
そもそも防衛省の研究予算は少なく、海外の技術動向にも無関心だ。メーカーは世界の市場で戦うこともないので、厳しい性能、品質、コストの競争にさらされることもない。防衛省のいうとおりにそれらしいものを作っているだけだ。天下りを受ければ不具合があっても問題化されない。しかも他国のメーカーが毎年のように開発しているのに開発は10年、20年に一度である。世界最先端の装備が開発できるわけもない。
日本の兵器が世界最先端というのはイリュージョンに過ぎない。
筆者は以前10式戦車に関連する記事で戦車開発の関わっていた陸自の機甲科OBの話として、着弾の衝撃で貫通しなくても中のクルーが死傷するという話を書いた。これに対して「軍オタ」界隈では猛烈な反発が起こった。それで筆者の記述が嘘であると暴くための計算大会まで始まった。
私的まとめ キヨさんの10式戦車発言から始まった軍クラ計算大会
https://togetter.com/li/309179
【社会/物理】軍事ライター・清谷信一氏の主張について その1
http://blog.livedoor.jp/wispywood2344/archives/53865390.html
だが2024年9月号の月刊軍事研究では元富士学校機甲科部長の赤谷信之元陸将補が「陸自10式戦車は日本の防衛に役に立つのか」という記事で以下のように述べている。
10式の開発間の実験と経験から、徹甲弾は戦車に命中すれば、数十万Gの圧力が砲塔内に加わるため、たとえ貫通しなくても、砲塔内の乗員に致命的なダメージを与えることとなる(聞いた話であるが、北海道で廃棄になったM4戦車の操縦手席と前方機銃手席に豚を置き、61式戦車の徹甲弾でM4戦車の砲塔に対して射撃を行ったところ、豚に致命傷を与えたことがある)。命中することが大事なのである。
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