アメリカ新政権の中国政策はどうなるか その3トランプ陣営は対中軍事抑止
Japan In-depth / 2024年10月21日 11時28分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・サタ―氏は、米中対決の原因を指摘し、両政権が中国の軍事意図に対する認識は一致していると述べた。
・トランプ政権は国防費を大幅に増額し中国を抑止する政策を明確にしたが、バイデン政権はその方針に反対。
・米国民の反中感情が強まり、議会は中国に対し強硬姿勢。ハリス政権でも国防費は増額される可能性高い。
古森:
「サタ―さんが指摘した諸点はきわめて重要であり、米中対決の原因そのものだといえます。またアメリカではバイデン陣営もトランプ陣営もそうした中国の意図については一致した共通認識があるわけです。しかし両陣営の姿勢が異なってくるのは、そうした危険な中国の意図に対して、どう対応するか、です。この点でのハリス、トランプ両陣営の大きな違いは軍事への対応です。
トランプ政権は中国を軍事面で抑止し、圧倒するという政策を明確にして、国防費を毎年、10数パーセントずつ、増額しました。大軍拡と呼んでよい措置でした。
一方、バイデン政権は国防費の大幅増額には反対という方針をとっています。2025年度の国防費も前年比の名目がわずか1%増でした。いまのインフレ率数%を引くと、この金額は実質上の削減です。もともと民主党リベラル派には軍事忌避の傾向があり、バイデン政権もその傾向に影響されてきました。
この違いを明白に反映したのは中国の軍事動向です。バイデン政権になって、中国の軍事活動は格段と攻勢的となりました。台湾の防空識別圏への中国軍の戦闘機、爆撃機の侵入が増えました。南シナ海のスプラットレー諸島ではフィリピンの統治地域に侵入し、フィリピン側の船舶を放水などで威圧し、占領水域を増しています。トランプ政権時代にはなかったことです。だから時のアメリカ政府が軍事面で中国に対峙するかどうかは、米中関係全体を特徴づけるという点で、きわめて大きな要因です。
トランプ氏は大統領時代に政権としての公式の国家防衛戦略のなかで『中国との戦争を防ぐ最善の方法』と強調して、『それはアメリカの軍事力を増強し、中国との戦争を覚悟して、もし戦争となれば、勝利できるだけの強固な軍事力を保持しておくことだ』と言明しました。中国も負けることが確実な戦争を絶対にしない。こういう発想はハリス政権ではまず出てこないでしょうね」
サタ―:
「ただしハリス政権でも国防費はもっと大幅に増額することになると思います。その理由はアメリカ議会全体に中国に対してのきわめて強硬な態度が確立されていることです。民主党、共和党の別なく中国をアメリカにとっての最大脅威とみて、軍事面でも強固な対応をする、というのが議会の一致した意見です。
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