国民はやはり中道を選んだ 政治の季節の隙間風 その3
Japan In-depth / 2024年10月30日 12時29分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「政治の季節」
【まとめ】
・ 選挙結果は、有権者が立憲民主党に政権を託すほどではないと考えていることを示した。
・ 自民、共産、維新は議席を減らし、特に共産党は腐敗告発にもかかわらず支持を広げられなかった。
・有権者は中道的な政治を求め、極端な政策よりもバランスの取れた政策を望んでいる。
前回の『自公は〈本当は〉負けていないかも知れない』というタイトルに、違和感を覚えたという読者も、おられるかも知れない。ほぼ全てのメディアが、自公が過半数を割ったことを「惨敗」と表現しているので、それも致し方ない、とは思う。
ただ、これも前回述べたことの繰り返しにはなるが、有権者は、立憲民主党を軸とする勢力が政権を取ることまでは望んでいなかったと見るのが妥当で、そのことは選挙結果からも明らかなのではないかと、私は考える。たとえば国民民主党だが、多くの候補者が小選挙区と比例区に重複立候補していた。小選挙区で落選した場合でも、得票率次第で「比例復活」が可能になる制度であるが、逆に当選した場合は、比例名簿からは自動的に削除される。
ご案内の通り今次の総選挙で、同党は改選前から4倍増となる28議席を得たが、多くが小選挙区で当選を果たしたため、比例区の候補者が足りなくなる、という事態を招いた。この結果、比例北関東ブロックでは1議席が公明党に、東海ブロックでは2議席が立憲民主党と自民党に渡ることとなったのである。
本気で政権交代を見据えるか、少なくとも政治状況を一変させようとの気概があったなら、こういうことにはならなかったのではないか。
もうひとつ、野党の中では日本維新の会(以下、維新)が改選前の44議席から38議席にまで減った。私が、いわゆる改憲勢力の退潮が顕著だと述べた理由のひとつが、これである。
もともと「大阪維新の会」を母体にした地方色の強い政党で、今次の選挙では、近畿地方以外の選挙区では苦戦せざるを得なかったのだが、それ以上に、憲法改正を強く主張する自民党保守派の「補完勢力」などとまで呼ばれていた政治姿勢に、有権者は厳しい判断を下した、ということであったと思えてならない。
憲法改正(=自主憲法制定)は自民党にとって結党以来の悲願、とよく言われるのだが、実際のところはと言うと、吉田茂以来「保守本流」と呼ばれた勢力は、日米安保体制を堅持して「共産主義の脅威」への対応は米軍に頼り、軍備にはあまり金をかけずに経済的繁栄を追求するという政策をとってきた。
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