トランプ前大統領の圧勝とその教示
Japan In-depth / 2024年11月7日 23時21分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米大統領選、トランプ候補圧勝。学ぶべきは米世論調査結果の錯誤。
・そして、トランプ氏の強烈な指導性とハリス氏の政治指導者としての脆弱性。
・日本側でのアメリカ政治の読み方の錯誤も明らかになった。
アメリカ大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ前大統領が圧勝した。民主党のカマラ・ハリス副大統領に確実な差をつけて勝利した。激戦区とされた7州でもトランプ氏はすべて優勢となった。アメリカ、日本両方のメディアや世論調査機関が打ち出していた「大接戦」ではなく、文句のつけようのない圧勝だった。しかもトランプ氏は全米を合算した総得票数でもハリス氏を破った。共和党候補が投票総数で勝つのは20年ぶりだという。
当初の予測とは大きく異なるこの選挙から学ぶことはなにか。
まず第一はアメリカ側の世論調査結果の錯誤だろう。アメリカの政治の動向を従来の世論調査の数字に全面依存していては、実態を正確にはつかめない、という教訓である。
今回の選挙では9月はじめ以降、米側の世論調査機関は「ハリス候補の支持率急上昇」を伝え続けた。トランプ氏との戦いは「拮抗」、「大接戦」だとして、どちらが勝つかはまったく不明だとまで断じていた。
だが実際の票が投じられ、開票が始まると、出発点から終盤までトランプ氏の優位が一貫して続いた。しかもジョージア、ペンシルベニアなど計7つの競合州でもトランプ氏のリードが継続した。日本時間11月7日午前の現時点ではトランプ氏は当選に必要な全米選挙人270を軽く超えて、296人を獲得した。ハリス氏は226人と顕著な差をつけられ、「大接戦」とはならなかった。
しかもトランプ氏は全米総得票数でも現時点で7215万を得て、ハリス氏の6734万に大差をつけた。従来の大統領選挙ではニューヨーク州やカリフォルニア州という人口の巨大な地域を獲得する民主党候補が選挙人数では敗北しても、総得票数では共和党候補を上回るという実例が続いていた。トランプ氏自身も2016年の選挙では当選しながらも総得票数ではクリントン候補に負けていた。今回の結果はトランプ氏の強さの象徴だといえよう。
ハリス氏はすぐに敗北宣言をして、トランプ氏勝利を確定した。アメリカの識者の間での「選挙結果はかなりの期間、確定しない」という予測もみごとに外れたわけだ。
第二にはドナルド・トランプ氏の強烈な指導性である。同氏ほど敵陣営から叩かれ、けなされ、迫害された政治指導者は歴史でも類がない。その種の障害をすべて乗り越え、アメリカ国民多数派の支持を確保した同氏自身の意思、能力、リーダーシップは特筆されるべきだろう。
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