独裁より忖度が恐ろしい 「再トラ」ついに現実に その4
Japan In-depth / 2024年11月19日 15時0分
一報を受けたポスト紙の社会部長は、侵入場所が民主党全国本部のオフィスであったこと、5人が無線やカメラ、多額の現金を所持していたことを不審に思い、部下のボブ・ウッドワード記者(ロバート・レッドフォード演)に、法廷の取材を命じる。裁判所に出向いたウッドワード記者は、共和党系の大物弁護士が法廷に来ていること、さらには被告人の一人が元CIAの警備顧問であると告白するのを聞いて、これは単なる不法侵入事件ではない、と直感する。
さらには、社会部の先輩であるカール・バーンスタイン記者(ダスティ・ホフマン演)も、この事件に関心を寄せていた。彼はウッドワード記者が書いた原稿を、焦点がぼやけて読みにくいと評して、推敲した原稿を手渡す。最初は反発していたウッドワード記者も、バーンスタイン記者の原稿を読み終えるや、こちらの方がいい、と納得した。
かくして二人の記者の奮闘が始まるのだが、国家機密の厚い壁に阻まれて、思うように取材を進めることができない。どうにかこうにか記事の掲載にこぎ着けたところ、時のニクソン政権から、名指しで非難と嘲笑を受ける羽目になってしまった。しかし、ポスト紙はひるむことなく、ついにこの侵入事件が、民主党の機密文書を奪取しようとした「大統領の陰謀」であることを暴き、最終的には大統領を辞任に追い込んだのである。
世に言うウォーターゲート事件の内幕を描いたものだが、実はこの前年=1971年にも、ポスト紙はニューヨーク・タイムズ紙ともども「ペンタゴン・ペーパーズ」をすっぱ抜いている。ペンタゴンは米国防総省の俗称だが、くだんの機密文書には、ケネディ、ジョンソンの両政権が、勝利できるという確信を持てないままヴェトナム戦争に深入りしていった経緯が記されていた。
この事件でもポスト紙はニクソン政権から目の敵にされたが、当時の編集幹部は、社員の前でこう檄を飛ばしたという。
「これからポストは政府と闘う。広告の出稿停止などの圧力も予想されるが、それで経営が傾くようなら、社屋の1階を売りに出し、輪転機を2階に上げる。それでも駄目なら2階を売って輪転機は3階に上げる。最後は輪転機を屋上に上げることになるかも知れぬが、それでもポストは闘う」
当時、女性として初めて大新聞の発行人(後に同社のCEO)となったキャサリン・フラハム女史も、最初のうちこそ会社の先行きを心配していたが、最終的には編集局を支持することを決断。この「ペンタゴン・ペーパーズ」をめぐる騒動も2017年に映画化され、メリル・ストリープが同女史を演じて、アカデミー主演女優賞に輝いている。
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